文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

フリオ・コルタサル『石蹴り遊び』

フリオ・コルタサル 土岐恒二訳

『石蹴り遊び』 水声社

 

フリオ・コルタサル(1914-1984)の『石蹴り遊び』を読了しました。アルゼンチンの作家コルタサルの代表作のひとつです。

 

本書の特徴を語るには冒頭に置かれた「指定表」の存在に触れざるを得ません。コルタサルによると本書は「多数の書物から成り立って」いて、「とりわけ二冊の書物として読むことができる」といいます。本書は、第一部「向う側から」、第二部「こちら側から」、そして第三部「その他もろもろの側から」という三部構成をなしているのですが、コルタサルのいう「第一の書物」とは、第一部と第二部の各章を順番に読んだ後、第三部については読み捨てるものであるとされます。そして「第二の書物」とは「指定表」という言葉が示唆するとおり、第一部から第三部の各章を、まさに指定する順番で読み進めることによって浮かび上がってくる別の書物のことです。

 

この「第一の書物」と「第二の書物」は両方を読み比べてこそ面白みがあるものだと思いますが、そこまでくると更なる「多数の書物」としての有様にも興味を覚えてしまいます。このバラバラの断片をどのように組み合わせるかという命題が、果て無き宇宙に繋がっているというコルタサルの幻視こそを私たちは楽しむべきで、その作業を具体に楽しむこと自体にどこまでの魅力があるのかは解らないのですが。

 

【満足度】★★★★☆