ブッツァーティ(1906-1972)の『タタール人の砂漠』を読了しました。短編集『神を見た犬』を読んだときから気になっていた作品なのですが、ようやくブッツァーティの長編作品である本書を手に取ることができました。
訳者解説によると、もともとのタイトルは「砦」だったようなのですが、1940年に発表されて「砦」という題名では戦意高揚のための作品であると誤解されることを怖れて、現在のタイトルになったとのこと。読み終えてみるとどこか幻想的で良いタイトルだなと感じるのですが、やはり「砦」の方が作品の雰囲気にはしっくりくる気がします。それはおそらく、この作品がカフカの『城』を連想させるからでしょう。ブッツァーティが「イタリアのカフカ」と呼ばれる所以が解ったような気がします。
【満足度】★★★★☆