磯﨑憲一郎
『往古来今』 文春文庫
磯﨑憲一郎の『往古来今』を読了しました。5篇の短編小説が収められた作品集です。磯﨑氏は小説でしか描けないものを表現するのが上手な作家というイメージなのですが、本書に収録されたいずれの作品も小説ならではの時間的・空間的なずらしを含みながら読者の前に広げられています。「ビートルズで言うところの『ビートルズ・フォー・セール』や『ラバー・ソウル』に位置するような作品」とは「あとがき」における作家本人の言葉なのですが、たしかに、音楽というものの幅を広げようとした雑多なストレッチの結晶である音楽アルバムと似たような印象を受けなくもないといったところ。
【満足度】★★★☆☆