文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

イーヴィリン・ウォー『回想のブライズヘッド』

イーヴィリン・ウォー 小野寺健

『回想のブライズヘッド』 岩波文庫

 

イーヴィリン・ウォー(1903-1966)の『回想のブライズヘッド』を読了しました。原題は“Brideshead Revisited”で、文字通りに訳すと「ブライズヘッド再訪」となります。そのタイトルが表しているように、本書の語り手であるライダーが第二次世界大戦時に駐屯先として訪れたブライズヘッド邸にまつわる過去の記憶を紐解いていくかたちで、本書の物語は展開されていきます。

 

本書の第一部で語られるブライズヘッド邸の一族の次男であるセバスチアンとの友情物語には青春小説的な趣があり、第三部で展開される長女ジューリアとの恋愛や上流階級の人間模様には成熟した絢爛さがあります。物語の全体を通底するのはカトリック主義や信仰に関する葛藤ということだそうですが、その細かい機微まで感じ取ることは私にはできません。多面的な魅力を持った作品で、あらためて読み返してみるとまた新しい発見がありそうな気もします。

 

【満足度】★★★