文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

J・K・ユイスマンス『さかしま』

J・K・ユイスマンス 澁澤龍彦

『さかしま』 河出文庫

 

J・K・ユイスマンス(1848-1907)の『さかしま』を読了しました。ユイスマンスはゾラの門下グループとしてそのキャリアを出発しながら、やがてゾラの提唱する自然主義を離れて19世紀末特有の厭世観に基づいた作品を発表し、1884年に「デカダンスの聖書」とも呼ばれる本書を発表しました。本書には訳者である澁澤龍彦氏による「あとがき集」や詳細な訳注も収録されています。

 

小説というよりは文芸批評といった趣のスタイルで書かれた作品で、当時の(そして当時に至る)文芸文化に触れることができます。主題とするものや読み心地はまったく異なるので不思議なのですが、本書を読みながらシュティフターの『晩夏』で展開されていた芸術論のことを思い出していました。

 

私自身はそこまでのめり込むことはできませんでしたが、好きな人は好き(当たり前の言い方ですが)という作品です。こればっかりは文学作品に対する「体質」のようなものではないかと思っていて、たとえ時間が経ったとしてもこの感じ方自体は変わることはないと思います。

 

【満足度】★★★☆☆