『シャーロック・ホームズの推理学』 講談社現代新書
内井惣七の『シャーロック・ホームズの推理学』を読了しました。シャーロック・ホームズは狭い意味での“logician”だったということを、ホームズの台詞や行動と19世紀の科学方法論とを比較するかたちで示そうとする試みです。
シャーロック・ホームズの推理というものを例にとりながら、正統的な科学哲学の歴史を学ぶことができるというのが本書の売りですが、19世紀の科学方法論自体がそれをすっきりとまとめるには少し陰影があり過ぎて、なかなか解りにくいことになっているような気がします。しかし、ホームズの推理法を科学哲学の専門家が解説したものとして、本書には類を見ない価値があると思います。
最後に付け加えられる進化論に関する論述については、面白かったのですが、本書のテーマからは蛇足ともいえるかもしれません。
【満足度】★★★★☆