文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

フィリップ・K・ディック『死の迷路』

フィリップ・K・ディック 山形浩生

『死の迷路』 ハヤカワ文庫

 

フィリップ・K・ディック(1928-1982)の『死の迷路』を読了しました。1970年に発表された作品で、ディック最盛期の作品と言ってよいのでしょうか。本書の帯には恩田陸氏による推薦文として「宇宙で最悪『嵐の山荘』。キモチ悪いが魅入られる」と記されています。本書の粗筋を「嵐の山荘」と表現するのは言い得て妙で、一人ひとりと登場人物が「死」を迎えていく本書のプロットをよく言い表しています。

 

エンディングのオチや真相よりも、「仲裁神」「導製神」「地を歩む者」「形相破壊者」といった「神々」の存在から成る世界観の方が興味深い作品なのですが、どこかチグハグな印象もあって、その世界観と物語のプロットが有機的に絡み合っているとはお世辞にも言えません。それなりに面白く読むことはできたのですが。

 

【満足度】★★★☆☆