文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

ジョナサン・フランゼン『コレクションズ』

ジョナサン・フランゼン 黒原敏行訳

『コレクションズ』 ハヤカワ文庫

 

ジョナサン・フランゼン(1959-)の『コレクションズ』を読了しました。2001年に発表されたフランゼンの第三作目の小説である本書は全米図書賞受賞作となり、その他にも数々の賞を受賞しました。パーキンソン病をわずらったアルフレッドとその妻イーニッド、そしてそれぞれの苦悩を抱える三人の子どもたちが織り成す家族劇は、ユーモラスでありながら悲劇的であり、アメリカの実相が如実に映し出されているようです。

 

“Corrections”(修正)というタイトルは極めて意味深なのですが、家族それぞれの地獄めぐりの果てに行き着いた不完全でボロボロな家族団らんの風景には、どこか静謐な印象すら感じてしまいます。どこまでいってもリアリスティックな現代社会ではファンタジーに逃れる術すらないのかもしれません。とても面白く読むことができました。

 

【満足度】★★★