『冬の夜ひとりの旅人が』 白水Uブックス
イタロ・カルヴィーノ(1923-1985)の『冬の夜ひとりの旅人が』を読了しました。企みに満ちた小説という印象が強い作品で、「あなたはイタロ・カルヴィーノの新しい小説『冬の夜ひとりの旅人が』を読み始めようとしている」という冒頭の文章からして、普通ではありません。入れ子構造のもとで展開される小説作品はその物語の羽を伸ばすことなく絶えず中断させられて、本書の読者や“作中の読者”を幻惑します。そのメタフィクショナルな展開も含めて楽しめる人は楽しむことができるし、なかにはまったく受け付けない人もいるのではないかと予想されます。
私自身はそれなりに楽しく読むことができたのですが、もう少し立ち止まってじっくりと読み進めてみてもよかったのかもしれないと感じています。いつかまた本書を読み返すことはあるのでしょうか。
【満足度】★★★★☆