文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

吉村達也『最後の惨劇』

吉村達也

『最後の惨劇』 徳間文庫

 

吉村達也の『最後の惨劇』を読了しました。「惨劇の村」と題された五部作も本書でエンディングを迎えることとなります。物語の展開としては驚くほど短く感じられて、本書においておこる事件はあっという間に解決が図れることになります。その分読み応えがあるように力が入れられているのは、カットバックで挿入される主人公の「父」とその「友人」を巡る過去の物語で、本書の末尾に付された「事件前史」こそがこの五作品を通じて隠されていた真相を形作るものとなっています。四つの村における惨劇を一つの意思のもとにまとめる手筋はあまり洗練されたものではなく、その点が本シリーズに対する満足度をやや下げてしまっていると思うのですが、それでも作者の意欲が感じられて楽しく読書をすることができました。

 

【満足度】★★★☆☆