加島祥造編
エドガー・アラン・ポー(1809-1849)の対訳詩集です。「黒猫」や「アッシャー家の崩壊」などゴシックホラー短編小説や、世界初の推理小説ともいわれる「モルグ街の殺人」で知られるポーですが、本書の訳者による前書きによれば「アメリカの詩人や批評家の多くはポーの詩を高く評価しないできた」とのこと。
「アナベル・リー」や「大鴉」などよく知られた詩も多いだけに、アメリカであまりポーの詩が高く評価されてこなかったという指摘は意外だったのですが、訳者は二十世紀を代表する詩人のひとりであるイェーツがポーを「古今東西を通じての偉大な抒情詩人」と評していることを挙げつつ、ポーの詩の持つ美や魅力を紹介しようとしています。リズムや響きの心地よさを直感的に理解できる「アナベル・リー」や、“Nevermore”という言葉に愛する者を永遠に失なってしまった痛切さがにじむ「大鴉」は、英詩の世界への良き入門ガイドになっているようにも思います。
【満足度】★★★★☆