文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

2023-08-15から1日間の記事一覧

ペーター・ハントケ『反復』

ペーター・ハントケ 阿部卓也訳 『反復』 同学社 ペーター・ハントケ(1942-)の『反復』を読了しました。本書が発表されたのは1986年のことで、若くして気鋭の劇作家としてデビューを飾ったハントケが丸みを帯びていくように円熟していく過程において書かれ…

瀬名秀明『パラサイト・イヴ』

瀬名秀明 『パラサイト・イヴ』 角川ホラー文庫 瀬名秀明の『パラサイト・イヴ』を読了しました。第2回日本ホラー小説大賞の受賞作である本書は、現役の研究知識をその土台として展開した物語の手際が高い評価に繋がったのだと思うのですが、本書が怖いホラ…

赤川次郎『小豆色のテーブル』

赤川次郎 『小豆色のテーブル』 光文社文庫 赤川次郎の『小豆色のテーブル』を読了しました。新章に突入したシリーズ作品の続きが気になって、続けて読む次第となりました。ここからの作品は以前に一度読んだどうか記憶が定かではないのですが、これからの展…

赤川次郎『暗黒のスタートライン』

赤川次郎 『暗黒のスタートライン』 光文社文庫 赤川次郎の『暗黒のスタートライン』を読了しました。シリーズ作品のひとつの分岐点をなす作品なのですが、おそらくというよりも間違いなく、シリーズ数作品前の時点から作者はこの地点に向けての助走を始めて…

宗田理『ぼくらの○秘学園祭』

宗田理 『ぼくらの○秘学園祭』 角川文庫 宗田理の『ぼくらの○秘学園祭』を読了しました。何とも不思議なプロットの作品で、どのような経緯でこの作品が生まれるに至ったのかについて興味が湧いてきます。子どもや老人たちのイノセンスとパワーという作者お得…

二階堂黎人『聖アウスラ修道院の惨劇』

二階堂黎人 『聖アウスラ修道院の惨劇』 講談社文庫 二階堂黎人の『聖アウスラ修道院の惨劇』を読了しました。本シリーズについては、あまりまともに読んでしまうと肩透かしをくらってしまうので、シュールなコメディだと思って読むのがちょうど良いのではな…

吉村達也『出雲信仰殺人事件』

吉村達也 『出雲信仰殺人事件』 角川文庫 吉村達也の『出雲信仰殺人事件』を読了しました。ところどころに面白い発想を交えながらも、それを一つの作品としてうまく昇華しきらないままに書き上げた作品という印象です。シリーズ作品のキャラクター性など、プ…

赤川次郎『沈める鐘の殺人』

赤川次郎 『沈める鐘の殺人』 講談社文庫 赤川次郎の『沈める鐘の殺人』を読了しました。作者の作品はどれほどライトに書かれたものであっても、どこかに光る部分を見つけることができる作品がほとんどなのですが、本書についてはほとんど見るべき部分がなか…

島田荘司『Yの構図』

島田荘司 『Yの構図』 光文社文庫 島田荘司の『Yの構図』を読了しました。本書をあらためて読み返してみて感じたのはその異色ぶりというか、本書の結末は作者の作品群の中にあってかなり特異なものになっていると思います。作者が本書の主題を扱う手並みは…

ピエール・ルメートル『監禁面接』

ピエール・ルメートル 橘明美訳 『監禁面接』 文春文庫 ピエール・ルメートルの『監禁面接』を読了しました。グロテスクな悪意をグロテスクな悪意のままに描くこと、そしてその悪意に亀裂を入れるためには多くの犠牲を伴わなければならないことを作者は知悉…

マイクル・コナリー『警告』

マイクル・コナリー 古沢嘉通訳 『警告』 講談社文庫 マイクル・コナリーの『警告』を読了しました。作者のシリーズ作品の中では地味な部類に入ると思うのですが、ジャーナリストであるジャック・マカヴォイを主人公とする作品です。ジャーナリストという自…

『対訳 ジョン・ダン詩集―イギリス詩人選(2)』

湯浅信之訳 『対訳 ジョン・ダン詩集―イギリス詩人選(2)』 岩波文庫 『対訳 ジョン・ダン詩集―イギリス詩人選(2)』を読了しました。本書を読むまで、ジョン・ダン(1572-1631)という詩人のことはまったく知らなかったのですが、後世において形而上詩人…

吉村達也『邪宗門の惨劇』

吉村達也 『邪宗門の惨劇』 角川文庫 吉村達也の『邪宗門の惨劇』を読了しました。あらためて読み返してみて感じたのは、とても作者らしい作品だなという感想でした。他にも優れたミステリーをたくさん書いている作者ですが、本書には私が感じる作者のミステ…

有栖川有栖『火村英生に捧げる犯罪』

有栖川有栖 『火村英生に捧げる犯罪』 文春文庫 有栖川有栖の『火村英生に捧げる犯罪』を読了しました。ハードカバーで刊行されたときに一度読んでいるとは思うのですが、まったく思い出すことができず、今回の再読でも甦る記憶はごくわずかなものでした。そ…

赤川次郎『三毛猫ホームズの幽霊クラブ』

赤川次郎 『三毛猫ホームズの幽霊クラブ』 角川文庫 赤川次郎の『三毛猫ホームズの幽霊クラブ』を読了しました。シリーズのヨーロッパ篇の第二作目にあたる作品なのですが、いささか登場人物が多すぎて混乱してしまいます。凝ったプロットではあると思うので…

北村薫『覆面作家は二人いる』

北村薫 『覆面作家は二人いる』 角川文庫 北村薫の『覆面作家は二人いる』を読了しました。「日常の謎」と呼ぶにはいささか罪状の重い犯罪が描かれるのですが、そのファンタジックな筆致も相まって、何となく軽く読み進めることができます。その中にいくつか…

宗田理『ぼくんちの戦争ごっこ』

宗田理 『ぼくんちの戦争ごっこ』 角川文庫 宗田理の『ぼくんちの戦争ごっこ』を読了しました。作者が描く「ぼくらシリーズ」の番外編といった趣の作品で、シリーズ作品の主人公たちからは2年後輩にあたる中学一年生の男子生徒が本書の主人公となっています…

ジェイムズ・サーバー『虹をつかむ男』

ジェイムズ・サーバー 鳴海四郎訳 『虹をつかむ男』 ハヤカワ文庫 ジェイムズ・サーバー(1894-1961)の『虹をつかむ男』を読了しました。雑誌『ニューヨーカー』の編集者として活躍し、自身も作家・漫画家として多数の作品を寄稿したジェームズ・サーバーの…

島田荘司『Classical Fantasy Within 第三話 火を噴く龍』

島田荘司 『Classical Fantasy Within 第三話 火を噴く龍』 講談社 島田荘司の『Classical Fantasy Within 第三話 火を噴く龍』を読了しました。大雑把な言い方になってしまいますが、島田荘司氏の作品はその長大な作品の全体を通じて説得力を持たせるという…

星新一『妖精配給会社』

星新一 『妖精配給会社』 新潮文庫 星新一の『妖精配給会社』を読了しました。こうしてひとつの作品を通読してみると、星新一氏のショート・ショートにも(当然のことではありますが)出来不出来の差異はあるのだなと感じさせられるのですが、文体が安定して…

宗田理『ぼくらの修学旅行』

宗田理 『ぼくらの修学旅行』 角川文庫 宗田理の『ぼくらの修学旅行』を読了しました。既に中学生の冒険譚と呼ぶにはいささか突飛すぎるストーリーになっているのですが、読者との交流を通じてその時代の空気をうまく作品に取り入れていて、その力技に感心さ…

吉村達也『樹海』

吉村達也 『樹海』 角川ホラー文庫 吉村達也の『樹海』を読了しました。以前に読んだことのある作品の続編という位置づけになるようなのですが、ただページを繰っているだけになっているときもあって、あまりのめり込むことはできませんでした。 【満足度】★…

夢枕獏『神々の山嶺』

夢枕獏 『神々の山嶺』 集英社文庫 夢枕獏の『神々の山嶺』を読了しました。登山小説というジャンルがあることを認識してから初めて読む登山小説ですが、面白く読むことができました。 【満足度】★★★☆☆