文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

『パウル・ツェラン全詩集 Ⅰ』

中村朝子

パウル・ツェラン全詩集 Ⅰ』 青土社

 

パウル・ツェラン全詩集 Ⅰ』を読了しました。パウル・ツェラン(1920-1970)はドイツ系ユダヤ人の詩人の詩人で、両親はナチスにより強制収用所で死を迎え、パウル・ツェラン自身も強制労働に従事させられています。戦後はパリへと移住し、1948年に本書にも収録されている第一詩集「骨壷の中の砂」を発表します。

 

哲学者のアドルノは、アウシュヴィッツの後に詩を書くことは野蛮であると述べたとされますが、ツェランが綴る「死のフーガ」はアドルノの言に対する強烈なアンチテーゼとなっています。

 

明け方の黒いミルクぼくたちはそれを晩に飲む

ぼくたちはそれを昼にそして朝に飲むぼくたちはそれを夜に飲む

ぼくたちは飲むそして飲む

 

昔、この詩のドイツ語による朗読テープを聴いたことがあるのですが、淡々と繰り返される“und drink”のフレーズに圧倒された記憶があります。

 

【満足度】★★★★☆