文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

赤川次郎『血とバラ』

赤川次郎

『血とバラ』 角川文庫

 

赤川次郎の『血とバラ』を読了しました。超が付くベストセラー作家の初期短編集です。郷原宏氏による解説と及川達郎氏によるカバー画が安定のクオリティで作品を支えているという印象です。

 

【満足度】★★★☆☆

吉村達也『哀しき檸檬色の密室』

吉村達也

『哀しき檸檬色の密室』 角川文庫

 

吉村達也の『哀しき檸檬色の密室』を読了しました。密室トリックを表題に謳ってはいるものの、トリックそのものというよりはその“位置づけ”のようなものを描くことが、作者の狙いだったようです。結末の消化不良については、作者の計算どおりであったとしても、面食らう読者は多いのではないかと思います。

 

【満足度】★★★☆☆

サン=テグジュペリ『ちいさな王子』

サン=テグジュペリ 野崎歓

『ちいさな王子』 光文社古典新訳文庫

 

サン=テグジュペリ(1900-1944)の『ちいさな王子』を読了しました。日本でも大人気の本作品については、翻訳出版権がなくなってから多くの翻訳が出されましたが、岩波書店内藤濯訳以外を読むのは、私にとっては初めてのことです。まずもって『ちいさな王子』という原題に即した翻訳が選ばれていることが新鮮です。

 

夜間飛行』などの作品も十分に詩情を感じさせる小説だったと思うのですが、本作については作者の哲学のようなものが寓意的に詰め込まれた部分が特に目に付いて、嵌る人には嵌るのでしょうし、ある場面においてはそれが鼻についてしまう部分もあるのかもしれません。私自身の読書体験としては前者に軍配が上がるのですが、おそらくそれは少数派なのかなとも思います。

 

【満足度】★★★☆☆

ケストナー『飛ぶ教室』

ケストナー 丘沢静也訳

飛ぶ教室』 光文社古典新訳文庫

 

ケストナー(1899-1974)の『飛ぶ教室』を読了しました。新潮文庫の新訳でこの作品を読んだのは、およそ4年半前のことでしたが、本書が古本屋で100円で売られているのを見つけて、このたびの読書となりました。今回もクリスマスの読書には間に合うことがなかったのですが。

 

比較的新しい翻訳とはいえ、この光文社の翻訳の方が新潮文庫のそれよりも若干古いようです。新潮の翻訳で「道理さん」と訳されていたベーク先生は「正義さん」とされていて、こちらの方が直訳に近いのかもしれません。個人的には新潮文庫の翻訳の方が好みに近いような気がします。

 

【満足度】★★★☆☆

吉村達也『美しき薔薇色の殺人』

吉村達也

『美しき薔薇色の殺人』 角川文庫

 

吉村達也の『美しき薔薇色の殺人』を読了しました。トリッキーなミステリー小説を志向していたこれまでのシリーズ作品に比べると、それとは別のものに比重を置いたと思われる作品作りがなされているようです。かつて読んでみてどこか肩透かしを食らった印象のある三部作ですが、今回あらためてすべてを読み直してみるつもりです。

 

【満足度】★★★☆☆

吉村達也『由布院温泉殺人事件』

吉村達也

由布院温泉殺人事件』 講談社文庫

 

吉村達也の『由布院温泉殺人事件』を読了しました。作品の出来栄えという以前に、本の中に乱丁があって、そもそもストーリーを追うことができないという珍しい状況を迎えて、何とも不完全燃焼な読書となりました。

 

【満足度】★★☆☆☆

カーソン・マッカラーズ『心は孤独な狩人』

カーソン・マッカラーズ 村上春樹

『心は孤独な狩人』 新潮社

 

カーソン・マッカラーズ(1917-1967)の『心は孤独な狩人』を読了しました。1940年に作者が23歳の若さで発表した本書が、当時のアメリカの社会において驚きをもって迎えられたということは容易に想像がつきます。作者が若干23歳にして本書が示している文学的な深度に達していたという事実には本当に驚かされます。

 

孤独な聾唖者であるシンガーを結節点にして、いくつかの孤独な魂の遍歴が描かれる群像劇です。この重苦しさというものが、自分には決して無縁ではないものとして、もっと言えば自分自身にリアルに纏わり付いているものとして感じられるタイミングで本書を読んでいたら、また違った感想を覚えていたのかもしれません。

 

【満足度】★★★☆☆