『血とバラ』 角川文庫
赤川次郎の『血とバラ』を読了しました。超が付くベストセラー作家の初期短編集です。郷原宏氏による解説と及川達郎氏によるカバー画が安定のクオリティで作品を支えているという印象です。
【満足度】★★★☆☆
『ちいさな王子』 光文社古典新訳文庫
サン=テグジュペリ(1900-1944)の『ちいさな王子』を読了しました。日本でも大人気の本作品については、翻訳出版権がなくなってから多くの翻訳が出されましたが、岩波書店の内藤濯訳以外を読むのは、私にとっては初めてのことです。まずもって『ちいさな王子』という原題に即した翻訳が選ばれていることが新鮮です。
『夜間飛行』などの作品も十分に詩情を感じさせる小説だったと思うのですが、本作については作者の哲学のようなものが寓意的に詰め込まれた部分が特に目に付いて、嵌る人には嵌るのでしょうし、ある場面においてはそれが鼻についてしまう部分もあるのかもしれません。私自身の読書体験としては前者に軍配が上がるのですが、おそらくそれは少数派なのかなとも思います。
【満足度】★★★☆☆
『心は孤独な狩人』 新潮社
カーソン・マッカラーズ(1917-1967)の『心は孤独な狩人』を読了しました。1940年に作者が23歳の若さで発表した本書が、当時のアメリカの社会において驚きをもって迎えられたということは容易に想像がつきます。作者が若干23歳にして本書が示している文学的な深度に達していたという事実には本当に驚かされます。
孤独な聾唖者であるシンガーを結節点にして、いくつかの孤独な魂の遍歴が描かれる群像劇です。この重苦しさというものが、自分には決して無縁ではないものとして、もっと言えば自分自身にリアルに纏わり付いているものとして感じられるタイミングで本書を読んでいたら、また違った感想を覚えていたのかもしれません。
【満足度】★★★☆☆