カルミネ・アバーテ 栗原俊秀訳
『帰郷の祭り』 未知谷
カルミネ・アバーテ(1954-)の『帰郷の祭り』を読了しました。アバーテの作品を読むのはこれが三作目なのですが、本書はこれまでに読んだ彼の作品の中で最も古い時代のもの。訳者解説によれば、他の作品よりもさらに自伝的要素が濃いもになっているとのことです。
ホラと呼ばれる土地に結び付けられた一家の物語が、そこから「移住」せざるを得ない境遇に対する「怒り」を背景として、ナターレ(クリスマス)の祭りを主要なモチーフとして描かれています。時折カタカナで挿入されるアルバレシュ語について、何か別の翻訳処理はなかったのだろうかと思わされる部分もあるのですが。故郷の喪失というテーマを巡る普遍的な物語と、固有性に対する揺るぎのないこだわりとが、アバーテ作品の魅力であると感じさせられます。
【満足度】★★★★☆