ミシェル・ウエルベック(1956-)の『ある島の可能性』を読了しました。2005年に発表された本書は、著者の小説作品としては五冊目のものとなります。『闘争領域の拡大』で開かれた問題圏を背景に、『素粒子』で胚胎された着想をSF的に展開しながら、『ランサローテ島』を舞台のひとつとして、『プラットフォーム』で描かれた絶望的な分断へと突き進んでいく本書のプロットは、まさに著者の集大成というべきものになっています。
僕の夢想は、感情らしきもので満たされている。僕はここに在りながら、もはやここにはいない。それでも生は実在する。
海を前にして無限なる概念というものの一端を理解する未来人の姿は、ウエルベックが描いてきた苦々しい現実の果てに見えてくるひとつの生の実相なのですが、そこへと至るために彼の作品のこれまであったのだと感じさせられます。
【満足度】★★★★☆