『スラップスティック』 ハヤカワ文庫
カート・ヴォネガット(1922-2007)の『スラップスティック』を読了しました。1976年に発表された長編小説です。本書では、主人公であるウィルバー(プロローグにはめ込まれた「枠」を考慮するとそこには捻じれがあるのですが)の手記という体裁で彼の数奇な人生を描くというヴォネガットお得意の手法で描かれた物語が展開されています。
主人公と同様に奇形に生まれた姉との共生、重力が強まり謎の奇病が発生する荒廃した世界、統治機構の変容、そして新しい家族形態の発生。過剰なガジェットが用意されて「スラップスティック」と名づけられるに相応しいドタバタ劇が繰り広げられるわけですが、いささか各エピソードが消化不良に終わってしまった感は否めません。それも含めて「スラップスティック」というまとめ方なのかもしれませんが。
【満足度】★★★☆☆