文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

ヘニング・マンケル『霜の降りる前に』

ヘニング・マンケル 柳沢由実子訳

『霜の降りる前に』 創元推理文庫

 

ヘニング・マンケル(1948-2015)の『霜の降りる前に』を読了しました。作者が生み出した人気シリーズの主人公である刑事クルト・ヴァランダーの娘で、警察学校を修了して今まさに警察官になろうとしている女性リンダを主人公に据えた、シリーズの番外編というべき作品です。父であるクルト・ヴァランダーをはじめとするシリーズお馴染みのメンバーも揃って登場するため、ほとんどシリーズ作品といってもよいのかもしれませんが。

 

とはいえ本書を読んで感じたのは、刑事ヴァランダーシリーズの魅力を支えているのは、常に苦悩し、もがき続ける主人公の内面の葛藤の描写であって、やはりその点においてはリンダを主人公として描かれる本書は、読書の満足度の面でやや物足りないと言わざるを得ないのでした。

 

【満足度】★★★☆☆