文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

アリ・スミス『両方になる』

アリ・スミス 木原善彦

『両方になる』 新潮社

 

アリ・スミス(1962-)の『両方になる』を読了しました。現代イギリスを代表する作家の一人とされるアリ・スミスですが、作品を読むのは初めてのことです。本書の訳者でもある木原氏の書いた『実験する小説たち』でも紹介されており、興味を持ったのが本書を手に取ることになったきっかけでした。

 

ということで、本書には一つの大きな仕掛けがあるのですが「その仕掛け自体を本そのものの中には絶対に書かないでほしい」という作者の要望があるそうで、本書の中では(訳者あとがきも含めて)その仕掛けについては触れられていません。興味のある方はウェブ検索したり、あるいは上記の木原氏の本を読むとその仕掛けについて知ることができると思います。

 

母親を亡くしたばかりで世界と対峙する少女の生活を描いた「第一部」と、ルネサンス期のイタリア人画家の物語を描いた「第一部」からなる本書は、その「仕掛け」も相まって不思議な読後感をもたらしてくれます。非常に優れた現代小説で、とても感心させられました。

 

【満足度】★★★★☆