文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

マリオ・バルガス=リョサ『世界終末戦争』

マリオ・バルガス=リョサ 旦敬介訳

『世界終末戦争』 新潮社

 

マリオ・バルガス=リョサ(1936-)の『世界終末戦争』を読了しました。ほぼ発表の順番に呼んできたバルガス=リョサの長編小説ですが、若干入手しづらくなっている『パンタレオン大尉と女たち』と『フリアとシナリオライター』を飛ばして、本書を手に取ることとなりました。

 

本書は19世紀にブラジルの奥地で起こった宗教コミュニティによる反乱「カヌードスの乱」を題材とした作品です。ブラジルの映画監督ルイ・ゲーラに請われて執筆にあたったという映画の脚本(実際には実現しなかった)が本書の叩き台となったようで、史実に関する下調べもしっかりなされていたようです。そのせいもあってか、バルガス=リョサお得意の群像劇と自由間接話法、そして時制の揺らぎを入れた文体は、良くも悪くも安定したものになっていて、それが読みやすさに繋がっている部分もあれば、いささか退屈を覚えさせる原因にもなっている気がします。

 

個人的には本書をバルガス=リョサの最高傑作と評するには、クエスチョンマークが浮かんでしまうところではあります。ぎこちないながらも文学というものが秘めた熱量という点では『都会と犬ども』に、練達と挑戦のバランス感覚という点では『ラ・カテドラルでの対話』に軍配が上がるような気がします。

 

【満足度】★★★☆☆