ヘミングウェイ『誰がために鐘は鳴る』
ヘミングウェイ 高見浩訳
ヘミングウェイ(1899-1961)の『誰がために鐘は鳴る』を読了しました。左派と右派に別れて苛烈な争いが行われたスペイン内戦を舞台にした小説で、長編第一作である『日はまた昇る』に続いて、スペインという国に対するヘミングウェイのこだわりが感じられます。時折、登場人物の回想シーンや多視点による戦況の展開などが描かれるものの、山中にある橋梁の爆破を巡って行われるわずか数日間の密室劇ともいえるプロットで、癖の強いゲリラ同士のやり取りが読ませる作品になっています。
このテーマと手法において描かれる文学作品としてはかなり出来の良いものだと思いますし、大変面白く読むことができたのですが、その裏側にはテーマと手法自体の限界というものも透けて見えるような気がします。また、本書で描かれるジョーダンとマリアの恋愛を現代の若者が読んでどんな感想を抱くのか、聞いてみたいところではあります。
【満足度】★★★★☆