2020-01-01から1年間の記事一覧
Barry Stroud “The Significance of Philosophical Scepticism” Oxford University Press Barry Stroudの “The Significance of Philosophical Scepticism”を読了しました。原著の出版は1984年で、『君はいま夢を見ていないとどうして言えるのか―哲学的懐疑…
伊藤邦武 『フランス認識論における非決定論の研究』 晃洋書房 伊藤邦武の『フランス認識論における非決定論の研究』を読了しました。ブートルー、ポアンカレ、デュルケームという日本の哲学研究史においては決して注目されてきたとはいえないフランスの3人…
ジョナサン・サフラン・フォア 近藤隆文訳 『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』 NHK出版 ジョナサン・サフラン・フォア(1977-)の『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』を読了しました。“Extremely Loud and Incredibly Close”という原タ…
シュトルム 国松孝二訳 『美しき誘い 他一篇』 岩波文庫 テオドール・シュトルム(1817-1888)の『美しき誘い 他一篇』を読了しました。現在はデンマーク領である北ドイツ地方に生まれたシュトルムは、法律家であり、詩人・作家でもあります。本書は表題作の…
綿矢りさ 『蹴りたい背中』 河出文庫 綿矢りさの『蹴りたい背中』を読了しました。芥川賞最年少受賞ということで当時も大いに話題になった本書ですが、ふと読み返してみたくなって古本屋で文庫本を購入しました。発表当時も感じましたが、文学作品としては至…
G・ガルシア=マルケス 高見英一他訳 『悪い時 他9篇』 新潮社 G・ガルシア=マルケス(1928-2014)の『悪い時 他9篇』を読了しました。1958年から1962年にかけて発表された中短編を収録した作品集です。「大佐に手紙は来ない」、「ママ・グランデの葬儀」など…
滝口悠生 『ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス』 新潮文庫 滝口悠生の『ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス』を読了しました。滝口氏が芥川賞を受賞する前年に発表した作品で、著作としては三冊目にあたるのが本書です。まさに「体験」という他はない…
カルヴィーノ 川島英昭訳 『まっぷたつの子爵』 岩波文庫 カルヴィーノ(1923-1985)の『まっぷたつの子爵』を読了しました。本書は戦後のイタリアを代表する作家のひとりであるカルヴィーノが比較的初期に発表した作品です。戦中・戦後のイタリアを代表する…
閻連科 谷川毅訳 『年月日』 白水社 閻連科(1958-)の『年月日』を読了しました。フランツ・カフカ賞の受賞者であり、現代中国で最も注目を集める作家の一人である閻連科ですが、本書『年月日』は論争を呼ぶ数々の問題作とは少し毛色が違っていて、日照りの…
J・L・ボルヘス 鼓直訳 『詩という仕事について』 岩波文庫 J・L・ボルヘス(1899-1986)の『詩という仕事について』を読了しました。本書はアルゼンチン出身の作家・ボルヘスが1967年から68年にかけてハーバード大学で行った詩学講義の記録です。古今の文学…
スティーヴン・キング 浅倉久志訳 『ゴールデンボーイ』 新潮文庫 スティーヴン・キング(1947-)の『ゴールデンボーイ』を読了しました。『スタンド・バイ・ミー』との二分冊で出版された“Different Seasons”の「春夏編」に当たる作品で、「刑務所のリタ・…
クッツェー くぼたのぞみ訳 『鉄の時代』 河出書房新社 クッツェー(1940-)の『鉄の時代』を読了しました。池澤夏樹氏による個人編集の「世界文学全集」の一冊ですが、最近になって文庫化されたようです。その前に本書を購入した私は、タイミング的にどこか…
ジョージ・ソーンダーズ 岸本佐知子訳 『十二月の十日』 河出書房新社 ジョージ・ソーンダーズ(1958-)の『十二月の十日』を読了しました。2017年のブッカー賞受賞作である『リンカーンとさまよえる霊魂たち』に続く、ソーンダーズ二冊目の読書となります。…
ロバート・A・ハインライン 矢野徹・他訳 『輪廻の蛇』 ハヤカワ文庫 ロバート・A・ハインライン(1907-1988)の『輪廻の蛇』を読了しました。アメリカのSF作家・ハインラインの短編集です。原書の表題作は、本作とは異なり「ジョナサン・ホーグ氏の不愉快な…
バルガス=リョサ 西村英一郎訳 『密林の語り部』 岩波文庫 バルガス=リョサ(1936-)の『密林の語り部』を読了しました。本書が発表されたのは1987年のことで、大統領選に出馬する1990年の少し前ということになります。第二作『緑の家』でも描かれたアマゾン…
フィリップ・ロス 宮本陽吉訳 『背信の日々』 集英社 フィリップ・ロス(1933-2018)の『背信の日々』を読了しました。本書は作家であるネイサン・ザッカーマンを主人公(といってよいのか分かりませんが)とする作品群のひとつで、原題は“The Counterlife”…
青木淳悟 『匿名芸術家』 講談社 青木淳悟の『匿名芸術家』を読了しました。「四十日と四十夜のメルヘン」で新潮新人賞を受賞してデビューした青木氏ですが、本作はその前日譚というか創作秘話のようなものを、いつもの如く奇妙な小説仕立てで描いてみせた作…
スティーブン・キング 山田順子訳 『スタンド・バイ・ミー』 新潮文庫 スティーブン・キング(1947-)の『スタンド・バイ・ミー』を読了しました。“Different Seasons”と題された(ホラーではない)4篇の中編小説からなる作品集としてアメリカで刊行された原…
村上春樹 『カンガルー日和』 講談社文庫 村上春樹の『カンガルー日和』を読了しました。初めて読んだのは高校生のときだったでしょうか、そのときには「図書館奇譚」や「あしか祭り」のような寓話性を含んだ作品が印象に残りましたが、今読み返してみると「…
コーマック・マッカーシー 黒原敏行訳 『平原の町』 ハヤカワ文庫 コーマック・マッカーシー(1933-)の『平原の町』を読了しました。『すべての美しい馬』、『越境』に続く「国境三部作」の完結編とでもいうべき作品です。主人公は第一作『すべての美しい馬…
マルクス・ガブリエル 廣瀬覚訳 『新実存主義』 岩波新書 マルクス・ガブリエルの『新実存主義』を読了しました。「哲学界のロックスター」と奇妙なもてはやされ方をしているマルクス・ガブリエルは、テレビにも登場する現代の哲学者として(哲学という学問…
筒井康隆 『創作の極意と掟』 講談社文庫 筒井康隆の『創作の極意と掟』を読了しました。方法論に自覚的な作家(そうでない作家の方が例外的なのかもしれませんが)である筒井氏の創作論、というよりは批評的エッセイが収録されたのが本書です。肩の力が抜け…
ミロラド・パヴィチ 工藤幸雄訳 『ハザール事典 夢の狩人たちの物語[男性版]』 創元ライブラリ ミロラド・パヴィチ(1929-2009)の『ハザール事典 夢の狩人たちの物語[男性版]』を読了しました。現在のセルビア・ベオグラードで生まれたパヴィチが書いた…
カズオ・イシグロ 土屋政雄 『わたしを離さないで』 ハヤカワ文庫 カズオ・イシグロの『わたしを離さないで』を読了しました。昔ハードカバーで翻訳が出たときに読んで以来、何年ぶりかの再読となりました。当時はミステリーの文脈でも話題になった作品で、…
リチャード・セイラー/キャス・サンスティーン 遠藤真美訳 『実践行動経済学 健康、富、幸福への聡明な選択』 日経BP社 リチャード・セイラーとキャス・サンスティーンの『実践行動経済学 健康、富、幸福への聡明な選択』を読了しました。本書はノーベル経…
池澤夏樹 『スティル・ライフ』 中公文庫 池澤夏樹の『スティル・ライフ』を読了しました。1988年に芥川賞を受賞した作品です。個人文学全集の編者として、また書評家としての池澤氏については知っているのですが、実際のところ小説を読むのは初めてのことで…
レイモンド・チャンドラー 村上春樹訳 『ロング・グッドバイ』 ハヤカワ文庫 レイモンド・チャンドラー(1888-1959)の『ロング・グッドバイ』を読了しました。ずっと昔に清水氏の翻訳で読んだことはあったのですが、久しぶりの再読となりました。プロットの…
J・L・オースティン 坂本百大監訳 『オースティン哲学論文集』 勁草書房 J・L・オースティン(1911-1960)『オースティン哲学論文集』を読了しました。発話行為という概念を提唱したイギリス日常言語学派の哲学者、オースティンの論文集です。収録された12の…
忍足欣四郎訳 『中世イギリス英雄叙事詩 ベーオウルフ』 岩波文庫 英文学最古の文献(諸説あるようですが本書解説によれば8世紀頃に成立したとされます)といわれることもある『ベーオウルフ』を読了しました。現在のデンマークであるデネの国を舞台として、…
J・アップダイク 井上謙治訳 『金持になったウサギ』 新潮社 J・アップダイク(1932-2009)の『金持になったウサギ』を読了しました。『走れウサギ』(1960)、『帰ってきたウサギ』(1971)に続いて、1981年に発表されたウサギことハリー・アングストローム…