文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

英米文学

ヘミングウェイ『武器よさらば』

ヘミングウェイ 高見浩訳 『武器よさらば』 新潮文庫 ヘミングウェイ(1899-1961)の『武器よさらば』を読了しました。本書は1929年に発表された長編作品で、第一次世界大戦のイタリアを主な舞台として、イタリア軍に参加するアメリカ人のヘンリーと、イギリ…

ナサニエル・ウエスト『いなごの日/クール・ミリオン』

ナサニエル・ウエスト 柴田元幸訳 『いなごの日/クール・ミリオン』 新潮文庫 ナサニエル・ウエスト(1903-1940)の『いなごの日/クール・ミリオン』を読了しました。新潮文庫から合計で10冊が刊行されている村上柴田翻訳堂の最後の一冊です。フィッツジェ…

ジェフリー・デイーヴァー『ゴースト・スナイパー』

ジェフリー・デイーヴァー 池田真紀子訳 『ゴースト・スナイパー』 文春文庫 ジェフリー・デイーヴァーの『ゴースト・スナイパー』を読了しました。四肢麻痺の科学捜査官リンカーン・ライムを主人公とするミステリー小説です。数年ほど前までは、だいたい年…

ヴァージニア・ウルフ『三ギニー』

ヴァージニア・ウルフ 出淵敬子訳 『三ギニー』 みすず書房 ヴァージニア・ウルフ(1882-1941)の『三ギニー』を読了しました。みすず書房から刊行されている「ヴァージニア・ウルフ コレクション」の最後の一冊です。『自分だけの部屋』と同じく「女性」で…

ハーラン・エリスン『世界の中心で愛を叫んだけもの』

ハーラン・エリスン 浅倉久志・伊藤典夫訳 『世界の中心で愛を叫んだけもの』 ハヤカワ文庫 ハーラン・エリスン(1934-2018)の『世界の中心で愛を叫んだけもの』を読了しました。ヒューゴー賞を受賞した表題作や、映画化もされたという「少年と犬」など、15…

スティーヴン・キング『幸運の25セント硬貨』

スティーヴン・キング 浅倉久志他訳 『幸運の25セント硬貨』 新潮文庫 スティーヴン・キングの『幸運の25セント硬貨』を読了しました。本書は、キングの14の短編が収録された原著である短編集“Everytihing's Eventual : 14 Dark Tales”の日本語訳の二分冊の…

ディケンズ『デイヴィッド・コパフィールド』

ディケンズ 石塚裕子訳 『デイヴィッド・コパフィールド』 岩波文庫 チャールズ・ディケンズ(1812-1870)の『デイヴィッド・コパフィールド』を読了しました。1849年から1850年にかけて発表されたディケンズ中期の長編小説で、自伝的要素の強い作品であると…

J・M・クッツェー『イエスの学校時代』

J・M・クッツェー 鴻巣友季子訳 『イエスの学校時代』 早川書房 J・M・クッツェー(1940-)の『イエスの学校時代』を読了しました。本書は『イエスの幼子時代』の続編で、最終的には三部作として予定されている作品です。スペイン語が公用語として話される架…

W・サローヤン『ワン デイ イン ニューヨーク』

W・サローヤン 今江祥智訳 『ワン デイ イン ニューヨーク』 新潮文庫 W・サローヤン(1908-1981)の『ワン デイ イン ニューヨーク』を読了しました。原題は“One Day in the Afternoon of the World”で、少し意訳した日本語タイトルになっています。1964年…

コーマック・マッカーシー『ブラッド・メリディアン』

コーマック・マッカーシー 黒原敏行訳 『ブラッド・メリディアン』 ハヤカワ文庫 コーマック・マッカーシー(1933-)の『ブラッド・メリディアン』を読了しました。原著の出版は1985年のことで、出世作となった『すべての美しい馬』(1992年)よりも前なので…

トマス・ピンチョン『ヴァインランド』

トマス・ピンチョン 佐藤良明訳 『ヴァインランド』 新潮社 トマス・ピンチョン(1937-)の『ヴァインランド』を読了しました。大作『重力の虹』から16年(17年?)の後、1990年に発表された本書は、1960年代に青春時代を過ごしたヒッピーたちの若き日の回想…

アーウィン・ショー『夏の日の声』

アーウィン・ショー 常盤新平訳 『夏の日の声』 講談社文庫 アーウィン・ショー(1913-1984)の『夏の日の声』を読了しました。息子の野球の試合を眺める現代パートと、自分の人生の来し方・半生を振り返る男の回想とが交互に語られる構造の長編小説です。19…

ハーディ『テス』

ハーディ 井上宗次・石田英二訳 『テス』 岩波文庫 トマス・ハーディ(1840-1928)の『テス』を読了しました。原題を直訳すると「ダーバヴィル家のテス」ですが、日本では単に「テス」の翻訳名で知られている作品です。主人公であるテスが苛烈な運命に巻き込…

J・コルタサル/O・パスほか『短編コレクションⅠ』

J・コルタサル/O・パスほか 木村榮一/野谷文昭ほか訳 『短編コレクションⅠ』 河出書房新社 池澤夏樹個人編集による世界文学全集の一冊として刊行された『短編コレクションⅠ』を読了しました。南北アメリカ、アジア、そしてアフリカから短編小説が20篇収録…

バーナード・マラマッド『アシスタント』

バーナード・マラマッド 酒本雅之訳 『アシスタント』 荒地出版社 バーナード・マラマッド(1914-1986)の『アシスタント』を読了しました。寡作で知られているマラマッドですが、本書は彼が1957年に発表した小説第二作目です。私の手元にある本書は1969年に…

マーガレット・アトウッド『侍女の物語』

マーガレット・アトウッド 斎藤英治訳 『侍女の物語』 ハヤカワ文庫 マーガレット・アトウッド(1939-)の『侍女の物語』を読了しました。カナダの作家アトウッドは近年(たいていは前評判どおりにはいかな)ノーベル文学賞候補者として名前の挙げられる一人…

ヴァージニア・ウルフ『オーランドー』

ヴァージニア・ウルフ 川本静子訳 『オーランドー』 みすず書房 ヴァージニア・ウルフ(1882-1941)の『オーランドー』を読了しました。性別や時間軸を超えた「伝記」として、ウルフの著作群のなかでも特異な存在感をはなっているのが本書です。ウルフが一時…

トマス・ピンチョン『重力の虹』

トマス・ピンチョン 佐藤良明訳 『重力の虹』 新潮社 トマス・ピンチョン(1937-)の『重力の虹』をようやく読了しました。1973年に発表されたピンチョンの代表作とされる本書は、全米図書賞を受賞するものの、ピュリッツァー賞は「読みにくく卑猥である」と…

アントニイ・バージェス『時計じかけのオレンジ』

アントニイ・バージェス 乾信一郎訳 『時計じかけのオレンジ』 ハヤカワ文庫 アントニイ・バージェス(1917-1993)の『時計じかけのオレンジ』を読了しました。本作はイギリスの作家・評論家であるバージェスの作品としてよりも、スタンリー・キキューブリッ…

ジャネット・ウィンターソン『オレンジだけが果物じゃない』

ジャネット・ウィンターソン 岸本佐知子訳 『オレンジだけが果物じゃない』 白水Uブックス ジャネット・ウィンターソン(1959-)の『オレンジだけが果物じゃない』を読了しました。イギリスはマンチェスター生まれの作家であるウィンターソンが、24歳のとき…

フィリップ・K・ディック『宇宙の眼』

フィリップ・K・ディック 中田耕治訳 『宇宙の眼』 ハヤカワ文庫 フィリップ・K・ディック(1928-1982)の『宇宙の眼』を読了しました。1957年に発表されたディックの出世作と称される作品で、原題は“Eye in the Sky”です。いわゆる並行世界をテーマにしたSF…

レイモンド・チャンドラー『さようなら、愛しい人』

レイモンド・チャンドラー 村上春樹訳 『さようなら、愛しい人』 ハヤカワ文庫 レイモンド・チャンドラー(1888-1959)の『さようなら、愛しい人』を読了しました。私立探偵フィリップ・マーロウを主人公とするハードボイルド小説の古典ですが、読むのはたぶ…

サローヤン『ヒューマン・コメディ』

サローヤン 小川敏子訳 『ヒューマン・コメディ』 光文社古典新訳文庫 サローヤン(1908-1981)の『ヒューマン・コメディ』を読了しました。アルメニア人移民の2世として生まれたサローヤンが1943年に発表した長編作品が本書『ヒューマン・コメディ』です。…

シーグリッド・ヌーネス『友だち』

シーグリッド・ヌーネス 村松潔訳 『友だち』 新潮社 シーグリッド・ヌーネス(1951-)の『友だち』を読了しました。ニューヨーク生まれで書評誌の編集アシスタントを務めた後、作家になったという彼女の小説作品7作目が本書とのこと。全米図書賞の受賞作品…

エルモア・レナード『オンブレ』

エルモア・レナード 村上春樹訳 『オンブレ』 新潮文庫 エルモア・レナード(1925-2013)の『オンブレ』を読了しました。エルモア・レナードはエドガー賞も受賞したアメリカのミステリ畑の作家ですが、私が彼の作品を読むのは初めてのことでした。村上氏によ…

フォースター『ハワーズ・エンド』

フォースター 吉田健一訳 『ハワーズ・エンド』 河出書房新社 E・M・フォースター(1879-1970)の『ハワーズ・エンド』を読了しました。池澤夏樹氏の個人編集による世界文学全集の一冊として刊行されたもので、フォースターの作品に触れること自体が私にとっ…

J・D・サリンジャー『フラニーとズーイ』

J・D・サリンジャー 村上春樹訳 『フラニーとズーイ』 新潮文庫 J・D・サリンジャー(1919-2010)の『フラニーとズーイ』を読了しました。著者の意向により「まえがき」や「あとがき」を付すことができない本書には、「投げ込み特別エッセイ」という形で村上…

ケリー・リンク『マジック・フォー・ビギナーズ』

ケリー・リンク 柴田元幸訳 『マジック・フォー・ビギナーズ』 ハヤカワ文庫 ケリー・リンク(1969-)の『マジック・フォー・ビギナーズ』を読了しました。本書に収録された「妖精のハンドバッグ」はヒューゴー賞やネビュラ賞など、SF・ファンタジー系の賞を…

スティーヴン・ミルハウザー『エドウィン・マルハウス』

スティーヴン・ミルハウザー 岸本佐知子訳 『エドウィン・マルハウス』 河出文庫 スティーヴン・ミルハウザー(1943-)の『エドウィン・マルハウス』を読了しました。本書は1972年に発表された著者のデビュー作品で、フランスのメディシス賞外国語部門を受賞…

モーシン・ハミッド『西への出口』

モーシン・ハミッド 藤井光訳 『西への出口』 新潮社 モーシン・ハミッド(1971-)の『西への出口』を読了しました。パキスタン生まれの作者は、アメリカのロースクールを卒業後、マッキンゼーに勤務しながら小説の執筆を行い200年にデビュー、2007年に発表…