文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

2020-02-01から1ヶ月間の記事一覧

アリ・スミス『両方になる』

アリ・スミス 木原善彦訳 『両方になる』 新潮社 アリ・スミス(1962-)の『両方になる』を読了しました。現代イギリスを代表する作家の一人とされるアリ・スミスですが、作品を読むのは初めてのことです。本書の訳者でもある木原氏の書いた『実験する小説た…

木村資生『生物進化を考える』

木村資生 『生物進化を考える』 岩波新書 木村資生の『生物進化を考える』を読了しました。進化論の入門書ではあるのですが、その歴史や発展をそれなりに突っ込んだ仕方で詳述しており、著者の唱える分子進化の中立説の立場についてもその概略が述べられてい…

ピエール・ルメートル『天国でまた会おう』

ピエール・ルメートル 平岡敦訳 『天国でまた会おう』 ハヤカワ文庫 ピエール・ルメートル(1951-)の『天国でまた会おう』を読了しました。『その女アレックス』などのミステリー作品が日本でもヒットしたフランスの作家ルメートルが著した「文芸作品」(い…

ジョン・ロック『寛容についての手紙』

ジョン・ロック 加藤節・李静和訳 『寛容についての手紙』 岩波文庫 ジョン・ロック(1632-1704)の『寛容についての手紙』を読了しました。「寛容」という言葉でイメージされるのは極めて現代的で普遍的なテーマなのですが、本書でロックが問題とするのは、…

イタロ・カルヴィーノ『木のぼり男爵』

イタロ・カルヴィーノ 米川良夫訳 『木のぼり男爵』 白水Uブックス イタロ・カルヴィーノ(1923-1985)の『木のぼり男爵』を読了しました。カルヴィーノの代表作の一つとされている本書は、『まっぷたつの子爵』及び『不在の騎士』と共に三部作をなす作品で…

吉本ばなな『うたかた/サンクチュアリ』

吉本ばなな 『うたかた/サンクチュアリ』 新潮文庫 吉本ばななの『うたかた/サンクチュアリ』を読了しました。吉本さんの本を手にとって読むのはこれが初めての経験になります。繊細な恋愛小説・家族小説なのですが、端的にいうと、もっと若い頃に出会うべ…

内山勝利 責任編集『哲学の歴史 第1巻 哲学誕生【古代Ⅰ】』

内山勝利 責任編集 『哲学の歴史 第1巻 哲学誕生【古代Ⅰ】』 中央公論新社 『哲学の歴史 第1巻 哲学誕生【古代Ⅰ】』を読了しました。帯のコピーである「最初からクライマックス!」に思わずクスリとさせられますが、本書では古代ギリシアのいわゆる「ソクラ…

コーマック・マッカーシー『血と暴力の国』

コーマック・マッカーシー 黒原敏行訳 『血と暴力の国』 扶桑社ミステリー コーマック・マッカーシー(1933-)の『血と暴力の国』を読了しました。国境三部作の完結から7年後の2005年に発表された“No Country for Old Men”の邦訳です。メインストリームの文…

J・L・ボルヘス『語るボルヘス 書物・不死性・時間ほか』

J・L・ボルヘス 木村榮一訳 『語るボルヘス 書物・不死性・時間ほか』 岩波文庫 J・L・ボルヘス(1899-1986)の『語るボルヘス 書物・不死性・時間ほか』を読了しました。本書はアルゼンチンを代表する作家ボルヘスが1978年にブエノスアイレスの大学で行…

N・マルコム『ウィトゲンシュタイン 天才哲学者の思い出』 

N・マルコム 板坂元訳 『ウィトゲンシュタイン 天才哲学者の思い出』 講談社現代新書 N・マルコムの『ウィトゲンシュタイン 天才哲学者の思い出』を読了しました。本書はアメリカの哲学者であり、ケンブリッジ時代のウィトゲンシュタインに学び、「天才哲…

水野一晴『気候変動で読む地球史 限界地帯の自然と植生から』

水野一晴 『気候変動で読む地球史 限界地帯の自然と植生から』 NHKブックス 水野一晴の『気候変動で読む地球史 限界地帯の自然と植生から』を読了しました。一億年、一万年、千年、百年、十年、そして一日というスパンでの気候変動がもたらす地球や各地域へ…

レーモン・クノー『地下鉄のザジ』

レーモン・クノー 生田耕作訳 『地下鉄のザジ』 中公文庫 レーモン・クノー(1903-1976)の『地下鉄のザジ』を読了しました。フランス文学のいわゆる「ヌーヴォー・ロマン」や「ウリポ」の先駆的存在として有名なクノーは『文体練習』などの作品が有名ですが…

『大江健三郎自選短篇』

『大江健三郎自選短篇』 岩波文庫 『大江健三郎自選短篇』を読了しました。ほとんどの作品は再読なのですが、大江氏の処女作から90年代に発表された「後期」の作品まで、すべての収録作品に加筆修訂が施されているとのことで、本書の帯にあるようにまさに氏…

フリオ・コルタサル『石蹴り遊び』

フリオ・コルタサル 土岐恒二訳 『石蹴り遊び』 水声社 フリオ・コルタサル(1914-1984)の『石蹴り遊び』を読了しました。アルゼンチンの作家コルタサルの代表作のひとつです。 本書の特徴を語るには冒頭に置かれた「指定表」の存在に触れざるを得ません。…

左巻健男編著『新しい高校化学の教科書』

左巻健男編著 『新しい高校化学の教科書』 講談社 左巻健男編著『新しい高校化学の教科書』を読了しました。講談社ブルーバックスの「現代人のための高校理科」という副題のついたシリーズの一冊です。原子の構造や元素の周期表など、おなじみの知識を復習し…

ウィリアム・シェイクスピア『リチャード二世』

ウィリアム・シェイクスピア 小田島雄訳 『リチャード二世』 白水Uブックス ウィリアム・シェイクスピア(1564-1616)の『リチャード二世』を読了しました。白水Uブックスのシェイクスピア全集は本文に注釈のないシンプルなつくりが特徴で、劇の流れをその…

フローベール『感情教育』

フローベール 生島遼一訳 『感情教育』 岩波文庫 フローベール(1821-1880)の『感情教育』を読了しました。本書は『ボヴァリー夫人』、『サランボー』に続くフローベールにとって三作目となる長編小説。二月革命(1848)前後のパリを舞台にした青年フレデリ…