文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

2018-01-01から1年間の記事一覧

ジョン・アップダイク『メイプル夫妻の物語』

ジョン・アップダイク 岩元巌訳 『メイプル夫妻の物語』 新潮文庫 ジョン・アップダイク(1932-2009)の『メイプル夫妻の物語』を読了しました。仕事の合間のちょっとした時間や、休みの日のぽっかりとした隙間で読み進めて、随分と足の長い読書になりました…

ジョーゼフ・ヘラー『キャッチ=22』

ジョーゼフ・ヘラー 飛田茂雄訳 『キャッチ=22』 ハヤカワ文庫 ジョーゼフ・ヘラー(1923-1999)の『キャッチ=22』を読了しました。大学時代からずっと読みたいと思っていた作品なのですが、当時は品切れ重版未定のまま入手できない状況が続いていました。こ…

エーリヒ・ケストナー『飛ぶ教室』

エーリヒ・ケストナー 池内紀訳 『飛ぶ教室』 新潮文庫 エーリヒ・ケストナー(1899-1974)の『飛ぶ教室』を読了しました。タイトルは良く知っていたものの、これまでに読んだことはなかった本書ですが、新潮文庫スタークラシックスの新訳を仕事の合間の車中…

パトリック・モディアノ『パリ環状通り』

パトリック・モディアノ 野村圭介訳 『パリ環状通り』 講談社 パトリック・モディアノ(1945-)の『パリ環状通り』を読了しました。2014年のノーベル文学賞を受賞したモディアノさんの作品を読むのは初めてのこと。本作は彼のキャリアの中でも初期の作品で、…

ポオ『黒猫・モルグ街の殺人事件 他五篇』

ポオ 中野好夫訳 『黒猫・モルグ街の殺人事件 他五篇』 岩波文庫 エドガー・アラン・ポオ(1809-1849)の『黒猫・モルグ街の殺人事件 他五篇』を読了しました。大学時代だったか一度読んだことがあって、本棚の奥にまったく同じ本がしまわれていることにも気…

ファン・ジョンウン『野蛮なアリスさん』

ファン・ジョンウン 斎藤真理子訳 『野蛮なアリスさん』 河出書房新社 ファン・ジョンウン(1976-)の『野蛮なアリスさん』を読了しました。韓国文学を読むのは、ほとんど初めてのことかもしれません。というよりも、日本を除く東アジアの文学にほとんど触れ…

チャールズ・ディケンズ『二都物語』

チャールズ・ディケンズ 加賀山卓朗訳 『二都物語』 新潮文庫 チャールズ・ディケンズ(1812-1870)の『二都物語』を読了しました。とはいえ、読了したのは少し前のことで、このブログを書くまでに少し時間が空いてしまいました。何とも忙しい日々が続いてい…

トマス・ハーディ『呪われた腕 ハーディ傑作選』

トマス・ハーディ 河野一郎訳 『呪われた腕 ハーディ傑作選』 新潮文庫 トマス・ハーディ(1840-1928)の『呪われた腕 ハーディ傑作選』を読了しました。村上柴田翻訳堂の第三弾として、1968年の版が復刊されたもののようです。表題作の「呪われた腕」をはじ…

ジェイムズ・ヒルトン『チップス先生、さようなら』

ジェイムズ・ヒルトン 白石朗訳 『チップス先生、さようなら』 新潮文庫 ジェイムズ・ヒルトン(1900-1954)の『チップス先生、さようなら』を読了。これまでも何となく名前を聞いたことがあった本書ですが、新潮文庫から2016年に発刊された新訳を手に取って…

フィリップ・ロス『父の遺産』

フィリップ・ロス 柴田元幸訳 『父の遺産』 集英社文庫 フィリップ・ロス(1933-2018)の『父の遺産』を読了しました。本棚に置いたまま時間が過ぎていたフィリップ・ロスの本を手に取ったのは、彼の訃報を知ったことがきっかけなのですが、忙しさの合間に少…

ロバート・L・スティーヴンソン『ジキルとハイド』

ロバート・L・スティーヴンソン 田口俊樹訳 『ジキルとハイド』 新潮文庫 ロバート・L・スティーヴンソン(1850-1894)の『ジキルとハイド』を読了しました。高校生か大学生の頃に岩波文庫で読んだ記憶があるのですが、今回は新潮文庫の新訳での再読となりま…

ウィリアム・サローヤン『僕の名はアラム』

ウィリアム・サローヤン 柴田元幸訳 『僕の名はアラム』 新潮文庫 ウィリアム・サローヤン(1908-1981)の『僕の名はアラム』を読了しました。サローヤンといえば、高校時代くらいに古本屋で『ママ・アイラブユー』、『パパ・ユーアークレイジー』という印象…

カルペンティエル『失われた足跡』

カルペンティエル 牛島信明訳 『失われた足跡』 岩波文庫 アレホ・カルペンティエル(1904-1980)の『失われた足跡』を読了しました。カルペンティエルはスイスに生まれてキューバのハバナで12歳までを過ごし、その後フランスに転居した後、再びキューバに移…

ブッツァーティ『神を見た犬』

ブッツァーティ 関口英子訳 『神を見た犬』 光文社古典新訳文庫 ディーノ・ブッツァーティ(1906-1972)の『神を見た犬』を読了しました。ブッツァーティはイタリアの作家・画家で、彼の作品を読むのは初めてのこと。しかし、読んでいる最中はずっと「どこか…

フランシス・ホジソン・バーネット『小公女』

フランシス・ホジソン・バーネット 畔柳和代訳 『小公女』 新潮文庫 フランシス・ホジソン・バーネット(1849-1924)の『小公女』を読了しました。原題は「A Little Princess」。普段はあまり読むことのない児童文学ですが、新潮文庫の新訳シリーズで手に取…

アンドレ・ブルトン『シュルレアリスム宣言・溶ける魚』

アンドレ・ブルトン 巌谷國士訳 『シュルレアリスム宣言・溶ける魚』 岩波文庫 アンドレ・ブルトン(1896-1966)の『シュルレアリスム宣言・溶ける魚』を読了しました。何となく読んでいた気になっていながら、今まできちんと読んだことはなかった作品でした…

ブライアン・エヴンソン『遁走状態』

ブライアン・エヴンソン 柴田元幸訳 『遁走状態』 新潮社 ブライアン・エヴンソン(1966-)の『遁走状態』を読了しました。340ページというボリュームの本に19の短編が収録されています。短い作品が多いので気が向いたときに少しずつ読み進めるという仕方で…

ペーター・ハントケ『左ききの女』

ペーター・ハントケ 池田香代子訳 『左ききの女』 同学社 ペーター・ハントケ(1942-)の『左ききの女』を読了しました。「新しいドイツの文学」シリーズと銘打たれて1989年に翻訳の初版が発行されています。ペーター・ハントケは1966年にデビューした後、19…

カーソン・マッカラーズ『結婚式のメンバー』

カーソン・マッカラーズ 村上春樹訳 『結婚式のメンバー』 新潮文庫 カーソン・マッカラーズ(1917-1967)の『結婚式のメンバー』を読了しました。「村上柴田翻訳堂」と題された新潮文庫の新訳・復刊のシリーズで、全10冊が刊行されています。本書は村上春樹…

J・M・クッツェー『マイケル・K』

J・M・クッツェー くぼたのぞみ訳 『マイケル・K』 岩波文庫 J・M・クッツェー(1940-)の『マイケル・K』を読了しました。2003年にノーベル文学賞を受賞したクッツェーの作品を読むのは、本書『マイケル・K』と同じくブッカー賞を受賞した『恥辱』に続いて…

ミハイル・ブルガーコフ『犬の心臓・運命の卵』

ミハイル・ブルガーコフ 増本浩子/ヴァレリー・グレチュコ訳 『犬の心臓・運命の卵』 新潮文庫 ミハイル・ブルガーコフ(1891-1940)の『犬の心臓・運命の卵』を読了。ミハイル・ブルガーコフの作品を読むのは初めてでした。そういえば、ソ連時代のロシア(…

若島正『ロリータ、ロリータ、ロリータ』

若島正 『ロリータ、ロリータ、ロリータ』 作品社 海外文学作品、つまりは、いわゆる「一次文献」だけではなくて、研究書や解説書などの「二次文献」を読了したときも、その感想を綴っていきたいと思います。今回はナボコフ研究者として知られる若島正の『ロ…

J.D.サリンジャー『ナイン・ストーリーズ』

J.D.サリンジャー 野崎孝訳 『ナイン・ストーリーズ』 新潮文庫 J.D.サリンジャー(1919-2010)の『ナイン・ストーリーズ』を読了しました。熱狂的なファンの多いサリンジャーですが、高校生のときに本書を読んだときはあまりピンと来ることはなくて、今回の…

G・ガルシア=マルケス『族長の秋 他6篇』

G・ガルシア=マルケス 鼓直 他訳 『族長の秋 他6篇』 新潮社 ガルシア=マルケス(1928-2014)の『族長の秋 他6篇』を読了。「族長の秋」については学生時代に集英社文庫で読んだことがあります。「他6篇」とある短編作品群については『エレンディラ』として…

コーマック・マッカーシー『すべての美しい馬』

コーマック・マッカーシー 黒原敏行訳 『すべての美しい馬』 ハヤカワ文庫 コーマック・マッカーシー(1933-)の『すべての美しい馬』を読了しました。昨年末頃に彼の『ザ・ロード』を読んで、冬の寒さも相まって荒涼とした世界の描写とそのなかで感じられる…

ジョゼ・サラマーゴ『見知らぬ島への扉』

ジョゼ・サラマーゴ 黒木三世訳 『見知らぬ島への扉』 アーティストハウス ジョゼ・サラマーゴ(1922-2010)の『見知らぬ島への扉』を読了しました。ジョゼ・サラマーゴは1998年にノーベル文学賞を受賞したポルトガルの作家で、本書が日本で出版されたのは20…

ヴァージニア・ウルフ『燈台へ』

ヴァージニア・ウルフ 伊吹知勢訳 『燈台へ』 みすず書房 ヴァージニア・ウルフ(1882-1941)の『燈台へ』を読了しました。昨年の秋頃だったか、仕事帰りに立ち寄った古本市で、みすず書房の『ヴァージニア・ウルフ コレクション』の美本が安く売られている…

トルストイ『復活』

トルストイ 藤沼貴訳 『復活』 岩波文庫 トルストイ(1828-1910)が晩年に記した長編『復活』を読了しました。『戦争と平和』を読んでトルストイのすごさに開眼させられ、『アンナ・カレーニナ』を読んでその構成力に驚かされ、この『復活』についても期待し…

カズオ・イシグロ『遠い山なみの光』

カズオ・イシグロ 小野寺健訳 『遠い山なみの光』 ハヤカワ文庫 カズオ・イシグロ(1954-)の『遠い山なみの光』を読了しました。『日の名残り』と同様に学生時代に一度読んだことのある作品で、当時読んだのはちくま文庫で『女たちの遠い夏』というタイトル…

レイモンド・カーヴァー『愛について語るときに我々の語ること』

レイモンド・カーヴァー 村上春樹訳 『愛について語るときに我々の語ること』 中古公論新社 レイモンド・カーヴァー(1938-1988)の全集第2巻である『愛について語るときに我々の語ること』を読了。この巻はもうあまり流通していないのか、近隣の書店はもち…