文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

2021-05-01から1ヶ月間の記事一覧

トム・ジョーンズ『拳闘士の休息』

トム・ジョーンズ 岸本佐知子訳 『拳闘士の休息』 河出文庫 トム・ジョーンズ(1945-2016)の『拳闘士の休息』を読了しました。本書の表題作はトム・ジョーンズのデビュー作で『ニューヨーカー』への持ち込み原稿が編集者の目に留まり発表されると、1993年の…

村上龍『コインロッカー・ベイビーズ』

村上龍 『コインロッカー・ベイビーズ』 講談社文庫 村上龍の『コインロッカー・ベイビーズ』を読了しました。学生時代に読んだ記憶があるのですが、久しぶりの再読でプロットなどはすっかり忘れてしまっていました。コインロッカーから生まれ出るという強烈…

バーナード・マラマッド『レンブラントの帽子』

バーナード・マラマッド 小島信夫・浜本武雄・井上謙治訳 『レンブラントの帽子』 夏葉社 バーナード・マラマッド(1914-1986)の『レンブラントの帽子』を読了しました。『レンブラントの帽子』は1973年にニューヨークの出版社から刊行された、マラマッドの…

レイモンド・チャンドラー『リトル・シスター』

レイモンド・チャンドラー 村上春樹訳 『リトル・シスター』 ハヤカワ文庫 レイモンド・チャンドラー(1888-1959)の『リトル・シスター』を読了しました。私立探偵フィリップ・マーロウを主人公とする七つの長編作品のうち、1949年に発表された五作目にあた…

『モーパッサン短編集Ⅰ』

モーパッサン 青柳瑞穂訳 『モーパッサン短編集Ⅰ』 新潮文庫 『モーパッサン短編集Ⅰ』を読了しました。フローベールへの師事のもと、作家となったモーパッサン(1850-1893)はわずか10年あまりの間に360編以上の短編・中編作品、7巻の長編作品、旅行記、戯曲…

フィリップ・ロス『グッバイ、コロンバス』

フィリップ・ロス 中川五郎訳 『グッバイ、コロンバス』 朝日出版社 フィリップ・ロス(1933-2018)の『グッバイ、コロンバス』を読了しました。1959年に発表されたこの作品はロスのデビュー作で、全米図書賞も受賞しています。発表されたときは中編作品「グ…

H・P・ラヴクラフト『インスマスの影 クトゥルー神話傑作選』

H・P・ラヴクラフト 南條竹則訳 『インスマスの影 クトゥルー神話傑作選』 新潮文庫 H・P・ラヴクラフト(1890-1937)の『インスマスの影 クトゥルー神話傑作選』を読了しました。新潮スタークラシックスと題された、新潮文庫における海外文学の新訳シリーズ…

ジェフリー・ディーヴァー『悪魔の涙』

ジェフリー・ディーヴァー 土屋晃訳 『悪魔の涙』 文春文庫 ジェフリー・ディーヴァーの『悪魔の涙』を読了しました。映画化もされた『ボーン・コレクター』をはじめとする、四肢麻痺の科学捜査官リンカーン・ライムを主人公とするシリーズ作品が有名なディ…

イヴァン・ヴィスコチル/カリンティ・フリジェシュ『そうはいっても飛ぶのはやさしい』

イヴァン・ヴィスコチル/カリンティ・フリジェシュ 千野栄一・岩崎悦子訳 『そうはいっても飛ぶのはやさしい』 国書刊行会 イヴァン・ヴィスコチル(1929-)とカリンティ・フリジェシュ(1887-1938)の短編小説と戯曲作品を収録した『そうはいっても飛ぶの…

川崎寿彦『イギリス文学史入門』

川崎寿彦 『イギリス文学史入門』 研究者出版 川崎寿彦『イギリス文学史入門』を読了しました。初版の発行が1986年という少し古めの本ですが、大学の学部生向けのオーソドックスな英文学入門書です。『ベーオウルフ』から始まって、キングズリー・エイミスの…

ウィリアム・シェイクスピア『十二夜』

ウィリアム・シェイクスピア 小田島雄志訳 『十二夜』 白水Uブックス ウィリアム・シェイクスピア(1564-1616)の『十二夜』を読了しました。かなり昔に岩波文庫の翻訳で読んだ記憶があるのですが、今回は白水社から出版されている小田島氏による翻訳での再…

モリエール『ドン・ジュアン』

モリエール 鈴木力衛訳 『ドン・ジュアン』 岩波文庫 モリエール(1622-1673)の『ドン・ジュアン』を読了しました。いわゆるスペインの「ドン・ファン」を題材にしたモリエールの戯曲作品です。表紙カバーに記された解説文では、モリエールのドン・ファン像…

カート・ヴォネガット『国のない男』

カート・ヴォネガット 金原瑞人訳 『国のない男』 中公文庫 カート・ヴォネガット(1922-2007)の『国のない男』を読了しました。本書は2005年に刊行されたヴォネガットの遺作となった作品で、当時のアメリカの(というよりも世界の)社会情勢も踏まえたユー…

青木淳悟『学校の近くの家』

青木淳悟 『学校の近くの家』 新潮社 青木淳悟の『学校の近くの家』を読了しました。小説というかたちで何か不思議なものを表現しようとする青木氏の作風と、「小学校」という誰もが通過した場所でありながらどこか世間とは隔絶した特殊な空間とは、とても相…

モリエール『タルチュフ』

モリエール 鈴木力衛訳 『タルチュフ』 岩波文庫 モリエール(1622-1673)の『タルチュフ』を読了しました。コルネイユやラシーヌと共に17世紀フランスを代表する劇作家のひとりであるモリエールですが、悲劇よりは喜劇の分野で名を成した作品が多く、本書も…

ウラジーミル・ナボコフ『ロリータ 魅惑者』

ウラジーミル・ナボコフ 若島正・後藤篤訳 『ロリータ 魅惑者』 新潮社 ウラジーミル・ナボコフ(1899-1977)の『ロリータ 魅惑者』を読了しました。新潮社から刊行されたナボコフ・コレクションの五巻目に当たる本書には、若島正氏による翻訳にロシア語版と…

『20世紀ラテンアメリカ短編選』

野谷文昭編訳 『20世紀ラテンアメリカ短編選』 岩波文庫 『20世紀ラテンアメリカ短編選』を読了しました。本書には16人のラテンアメリカ作家による短編が収録されています。ガルシア=マルケス、バルガス=リョサ、コルタサルやフエンテスなど既読の作家もいれ…

マイクル・コナリー『訣別』

マイクル・コナリー 古川嘉通 『訣別』 講談社文庫 マイクル・コナリーの『訣別』を読了しました。2016年に刊行されたハリー・ボッシュシリーズ作品です。原題は“The Wrong Side of Goodbye”で、チャンドラーの『ロング・グッドバイ』が想起されます。ロサン…

ヒュー・ロフティング『ドリトル先生航海記』

ヒュー・ロフティング 福岡伸一訳 『ドリトル先生航海記』 新潮文庫 ヒュー・ロフティング(1886-1947)の『ドリトル先生航海記』を読了しました。「ドリトル先生」シリーズは、イギリス生まれの土木技師である作者が娘と息子のために書いた物語が原型となっ…