文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

日本文学

宗田理『怪盗サンクスの冒険』

宗田理 『怪盗サンクスの冒険』 角川文庫 宗田理の『怪盗サンクスの冒険』を読了しました。本書のカバー裏に記された紹介文には「恋とスリルとサスペンスに満ちたおしゃれな都会派ミステリー」とあるのですが、どのあたりの読者層をターゲットにしているのか…

森博嗣『黒猫の三角』

森博嗣 『黒猫の三角』 講談社文庫 森博嗣の『黒猫の三角』を読了しました。ミステリーとしての企みに満ちたシリーズの第一作目で、クセのある登場人物に慣れてしまえば面白く読むことができます。このシリーズはかなり昔に途中まで読み進めて断絶してしまっ…

島田荘司『見えない女』

島田荘司 『見えない女』 光文社文庫 島田荘司の『見えない女』を読了しました。海外を舞台にしたノンシリーズの短編小説が三篇収録されていて、表紙カバーには「傑作トラベル・ミステリー」というキャッチコピーが付されています。表題作はチェスタトンの「…

川端裕人『風のダンデライオン 銀河のワールドカップ ガールズ』

川端裕人 『風のダンデライオン 銀河のワールドカップ ガールズ』 集英社文庫 川端裕人の『風のダンデライオン 銀河のワールドカップ ガールズ』を読了しました。『銀河のワールドカップ』の前日譚というべき作品なのですが、タイトルから予想されるよりも、…

吉村達也『年下の男』

吉村達也 『年下の男』 集英社文庫 吉村達也の『年下の男』を読了しました。物語の展開としてはストレートであるとも言えると思うのですが、そのことが期待はずれであると感じられてしまう部分もあって、なかなか難しいものです。 【満足度】★★☆☆☆

吉村達也『感染列島 パンデミック・デイズ』

吉村達也 『感染列島 パンデミック・デイズ』 小学館文庫 吉村達也の『感染列島 パンデミック・デイズ』を読了しました。未曾有のパンデミックを体験することとなった現在から見るといささか示唆的なテーマが取り扱われていますが、本書が発表されたのは今か…

赤川次郎『三毛猫ホームズの歌劇場』

赤川次郎 『三毛猫ホームズの歌劇場』 角川文庫 赤川次郎の『三毛猫ホームズの歌劇場』を読了しました。ヨーロッパを舞台に展開されるシリーズ長編作品の一作で、本書の舞台になっているのはオーストリアのウィーンです。本格ミステリーへのこだわりの片鱗の…

島田荘司『高山殺人行1/2の女』

島田荘司 『高山殺人行1/2の女』 光文社文庫 島田荘司の『高山殺人行1/2の女』を読了しました。ノンシリーズの作品で読み落としていた作品の一つです。島田氏の多くの著作に触れた現在の視点で読んでみると、たとえば『星籠の海』のプロットの一部にも見られ…

早坂吝『○○○○○○○○殺人事件』

早坂吝 『○○○○○○○○殺人事件』 講談社文庫 早坂吝の『○○○○○○○○殺人事件』を読了しました。第50回メフィスト賞受賞作である本書は、私としては珍しく、ノベルス版が刊行された当時に読んでいたのですが、今回は文庫版での再読となります。細かい記憶はないので…

斜線堂有紀『キネマ探偵カレイドミステリー~再演奇縁のアンコール~』

斜線堂有紀 『キネマ探偵カレイドミステリー~再演奇縁のアンコール~』 メディアワークス文庫 斜線堂有紀の『キネマ探偵カレイドミステリー~再演奇縁のアンコール~』を読了しました。作者の小説を読むのはシリーズ二作目である本書で二冊目となるのですが…

我孫子武丸『人形は遠足で推理する』

我孫子武丸 『人形は遠足で推理する』 講談社文庫 我孫子武丸の『人形は遠足で推理する』を読了しました。バスジャックの人質として取られた安楽椅子探偵が事件を解決するという趣向の作品なのですが、同種の作例はあるのでしょうか。ミステリーの部分でもう…

宗田理『復讐クラブは大にぎわい』

宗田理 『復讐クラブは大にぎわい』 角川文庫 宗田理の『復讐クラブは大にぎわい』を読了しました。長篇作品でありながら、連作短編集といった趣のある構成が取られていますが、その試みはそれほどうまくいっているようには思えません。とはいえ、ある種のサ…

歌野晶午『葉桜の季節に君を想うということ』

歌野晶午 『葉桜の季節に君を想うということ』 文春文庫 歌野晶午の『葉桜の季節に君を想うということ』を読了しました。今から20年前に発表されて話題をさらった作品で、その種明かしを知った上であらためて読み返してみると、またいろいろと発見させられる…

宮部みゆき『我らが隣人の犯罪』

宮部みゆき 『我らが隣人の犯罪』 文春文庫 宮部みゆきの『我らが隣人の犯罪』を読了しました。作者のデビュー作品である表題作を含む五編が収録された短編集です。いずれも出色の出来栄えといえるのですが、特に「サボテンの花」については、短い紙数の中で…

吉村達也『「長崎の鐘」殺人事件』

吉村達也 『「長崎の鐘」殺人事件』 徳間文庫 吉村達也の『「長崎の鐘」殺人事件』を読了しました。ミステリーとしては、密室を巡るひとつの謎を巡ってあれこれと考察が繰り広げられる部分に面白みがあるのだと思いますが、本書においては「隠れキリシタン」…

川端裕人『銀河のワールドカップ』

川端裕人 『銀河のワールドカップ』 集英社文庫 川端裕人の『銀河のワールドカップ』を読了しました。まるで少年漫画のような展開を見せるメインストーリーの脇の部分では、性に対して率直な様が描かれる主人公の恋人の存在や主人公自身が抱える過去のトラウ…

吉村達也『小樽「古代文字」の殺人』

吉村達也 『小樽「古代文字」の殺人』 光文社文庫 吉村達也の『小樽「古代文字」の殺人』を読了しました。不可能犯罪と異常心理をテーマとして大がかりなトリックが駆使されるシリーズ作品ですが、その謎のスケールに比べると解決篇の物足りなさが目立ってし…

北村薫『街の灯』

北村薫 『街の灯』 文春文庫 北村薫の『街の灯』を読了しました。昭和初期を舞台にした物語で、士族出身の上流家庭の令嬢とサッカレーの著した小説の主人公に準えて「ベッキーさん」と呼ばれる女性運転手を主人公に据えた作品です。物語が三部作を成すことも…

吉村達也『「富士の霧」殺人事件』

吉村達也 『「富士の霧」殺人事件』 徳間文庫 吉村達也の『「富士の霧」殺人事件』を読了しました。作者らしいミステリー作品といえばその通りなのですが、本格ミステリーとしての完成度を期待するといささか肩透かしを食ってしまうかもしれません。平田均と…

森博嗣『まどろみ消去』

森博嗣 『まどろみ消去』 講談社文庫 森博嗣の『まどろみ消去』を読了しました。作者が初めて発表した短編集ということになるのでしょうか、ノンシリーズ作品に加えて、お馴染みのシリーズキャラクターが登場する作品もあわせて収録されています。ミステリー…

川端裕人『声のお仕事』

川端裕人 『声のお仕事』 文春文庫 川端裕人の『声のお仕事』を読了しました。声優の世界で奮闘する若者の姿を描いた小説で、丁寧な取材に裏打ちされた作者らしい誠実な視点から語られる物語に惹き込まれてしまいました。ヤングアダルト作品と呼ぶには主人公…

赤川次郎『三毛猫ホームズの感傷旅行』

赤川次郎 『三毛猫ホームズの感傷旅行』 角川文庫 赤川次郎の『三毛猫ホームズの感傷旅行』を読了しました。三毛猫ホームズを主人公とするシリーズ作品の短編集なのですが、本書には「保健室の午後」というタイトルの作品が収録されていて、これは「三毛猫ホ…

清涼院流水『パーフェクト・ワールド What a perfect world! Book.3』

清涼院流水 『パーフェクト・ワールド What a perfect world! Book.3』 講談社 清涼院流水の『パーフェクト・ワールド What a perfect world! Book.3』を読了しました。Book2も少し前に読んではいるのですが、どうやら備忘録として記事を投稿することを失念…

島田荘司『Classical Fantasy Within 第四話 アル・ヴァジャイヴ戦記 決死の千騎行』

島田荘司 『Classical Fantasy Within 第四話 アル・ヴァジャイヴ戦記 決死の千騎行』 講談社 島田荘司の『Classical Fantasy Within 第四話 アル・ヴァジャイヴ戦記 決死の千騎行』を読了しました。本シリーズの刊行計画が最終的に迎えることとなる結末を何…

宗田理『ぼくらの最終戦争』

宗田理 『ぼくらの最終戦争』 角川文庫 宗田理の『ぼくらの最終戦争』を読了しました。何となく読み返している本シリーズ作品も、本書をもって「中学生篇」の最終巻となりました。卒業式へと至るまでの子どもたちのエキセントリックな冒険譚も、卒業式の後に…

吉村達也『孤独』

吉村達也 『孤独』 新潮文庫 吉村達也の『孤独』を読了しました。作者あとがきで述べられている言葉が、本書の読後感を正しく解説してくれるように思います。本格ミステリーとしての資格を備えながらも、ホラーやサイコスリラー、あるいは心理小説といった道…

宮部みゆき『地下街の雨』

宮部みゆき 『地下街の雨』 集英社文庫 宮部みゆきの『地下街の雨』を読了しました。類まれなるページターナーである作者の長篇作品群と比べると、やや大人しい印象の短編小説が並ぶ作品集です。ひとつの奇妙な感情のようなものを梃子にして物語が展開してい…

鈴木光司『リング』

鈴木光司 『リング』 角川ホラー文庫 鈴木光司の『リング』を読了しました。いわずと知れたホラー作品の古典ともいうべき小説です。仕方のないことですが、現代の視点から読むと作中に登場するアイテム(ビデオテープ)には古めかしさが感じられます。主人公…

我孫子武丸『裁く眼』

我孫子武丸 『裁く眼』 文春文庫 我孫子武丸の『裁く眼』を読了しました。ハードカバーとして(だったかソフトカバーだったか忘れてしまいましたが、とにかく単行本として)刊行された当時に読んで、その展開や結末についてはほとんど忘れた状態で、このたび…

佐藤友哉『フリッカー式 鏡公彦にうってつけの殺人』

佐藤友哉 『フリッカー式 鏡公彦にうってつけの殺人』 講談社ノベルス 佐藤友哉の『フリッカー式 鏡公彦にうってつけの殺人』を読了しました。第21回メフィスト賞受賞作品で、以前に文庫で読んだ記憶があるのですが、今回はノベルス版で読むこととなりました…