文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

ミシェル・ウエルベック『ショーペンハウアーとともに』

ミシェル・ウエルベック 澤田直訳 『ショーペンハウアーとともに』 国書刊行会 ミシェル・ウエルベックの『ショーペンハウアーとともに』を読了しました。現代フランスを代表する作家のひとりであるミシェル・ウエルベックが、20代のときに出会って決定的な…

ジェイムズ・ディッキー『救い出される』

ジェイムズ・ディッキー 酒本雅之訳 『救い出される』 新潮文庫 ジェイムズ・ディッキー(1923-1997)の『救い出される』を読了しました。村上柴田翻訳堂の企画で復刊された一冊です。原題は“Deliverance”で1971年に日本で翻訳出版されたときには『わが心の…

板橋好枝・髙田賢一編著『はじめて学ぶ アメリカ文学史』

板橋好枝・髙田賢一編著 『はじめて学ぶ アメリカ文学史』 ミネルヴァ書房 板橋好枝・髙田賢一編著『はじめて学ぶ アメリカ文学史』を読了しました。古本屋で何となく手に取って買い求めたものですが、棚に何冊か置いてあったことからすると、どこかの大学で…

トンミ・キンヌネン『四人の交差点』

トンミ・キンヌネン 古市真由美訳 『四人の交差点』 新潮社 トンミ・キンヌネン(1973-)の『四人の交差点』を読了しました。キンヌネンはフィンランドの作家で、デビュー作である本書が国内でベストセラーになるとともに16か国で翻訳されたとのこと。新鋭作…

柳瀬尚紀『翻訳はいかにすべきか』

柳瀬尚紀 『翻訳はいかにすべきか』 岩波新書 柳瀬尚紀(1943-2016)の『翻訳はいかにすべきか』を読了しました。「翻訳という語は、筆者にとって、あくまで日本語である」と本書の冒頭で宣言されていますが、「日本語」への翻訳にこだわる著者は、本書にお…

W・サローヤン『パパ・ユーア クレイジー』

W・サローヤン 伊丹十三訳 『パパ・ユーア クレイジー』 新潮文庫 W・サローヤン(1908-1981)の『パパ・ユーア クレイジー』を読了しました。本書は昭和63年発行の新潮文庫で、ピンク色の背表紙に懐かしさを覚えます。「今月の新刊」と書かれた帯には「想像…

J・M・クッツェー『サマータイム、青年時代、少年時代 ―辺境からの三つの〈自伝〉』

J・M・クッツェー くぼたのぞみ訳 『サマータイム、青年時代、少年時代 ―辺境からの三つの〈自伝〉』 インスクリプト J・M・クッツェーの『サマータイム、青年時代、少年時代 ―辺境からの三つの〈自伝〉』を読了しました。もともとは『少年時代』、『青年時…

冨田恭彦『観念論の教室』

冨田恭彦 『観念論の教室』 ちくま新書 冨田恭彦の『観念論の教室』を読了しました。本書の主題となっているのは、ジョージ・バークリーの観念論(彼自身の言い方を使えば「物質否定論」)なのですが、「観念」という言葉のルーツを古代ギリシアの原子論、そ…

フォークナー『アブサロム、アブサロム!』

フォークナー 藤平育子訳 『アブサロム、アブサロム!』 岩波文庫 フォークナー(1897-1962)の『アブサロム、アブサロム!』を読了しました。解説によれば、フォークナーは本書が完成したときに「アメリカ人によってそれまでに書かれた中で最高の小説だと思…

カロッサ『指導と信従』

カロッサ 国松孝二訳 『指導と信従』 岩波文庫 カロッサ(1878-1956)の『指導と信従』を読了しました。ハンス・カロッサはドイツの詩人・小説家で医者でもあります。小説作品には自伝的なものが多く、本書も幼年時代から、医師としての生活、そしてシュテフ…

ジル=ガストン・グランジェ『科学の本質と多様性』

ジル=ガストン・グランジェ 松田克進・三宅岳史・中村大介訳 『科学の本質と多様性』 文庫クセジュ ジル=ガストン・グランジェ(1920-)の『科学の本質と多様性』を読了しました。「私は何を知るか?」を意味するフランス語の名前が冠せられた、文庫クセジュ…

李承雨『真昼の視線』

李承雨 金順姫訳 『真昼の視線』 岩波書店 李承雨の『真昼の視線』を読了しました。本書の帯には「韓国でノーベル文学賞候補として注目される作家の長編小説」と書かれています。フランスをはじめとする海外でも評価の高い作家で、ル・クレジオなども李承雨…

アンソニー・ドーア『すべての見えない光』

アンソニー・ドーア 藤井光訳 『すべての見えない光』 新潮社 アンソニー・ドーアの『すべての見えない光』を読了しました。ピュリッツァー賞受賞作品で、日本では「Twitter文学賞」も受賞している本書ですが、長いこと本棚に読まれないままに置かれていて、…

ウラジミール・ナボコフ『マーシェンカ キング、クイーン、ジャック』

ウラジミール・ナボコフ 奈倉有里・諫早勇一訳 『マーシェンカ キング、クイーン、ジャック』 新潮社 ウラジミール・ナボコフ(1899-1977)の『マーシェンカ キング、クイーン、ジャック』を読了しました。ロシア語で書かれた初期の作品を中心に、英語から重…

北村薫『太宰治の辞書』

北村薫 『太宰治の辞書』 創元推理文庫 北村薫の『太宰治の辞書』を読了しました。円紫さんと《私》のシリーズ第六作目です。登場人物もすっかり歳を重ねていて、第一作で大学生だった《私》も、本作では出版社に勤めるベテラン編集者になっています。本をこ…

ロバート・L・スティーブンソン『宝島』

ロバート・L・スティーブンソン 鈴木恵訳 『宝島』 新潮文庫 ロバート・L・スティーブンソン(1850-1894)の『宝島』を読了しました。『ジキルとハイド』の著者としてよく知られているスティーブンソンですが、本書『宝島』もつとに有名な作品です。とはいえ…

W・V・O・クワイン『論理的観点から 論理と哲学をめぐる九章』

W・V・O・クワイン 飯田隆訳 『論理的観点から 論理と哲学をめぐる九章』 勁草書房 W・V・O・クワイン(1908-2000)の『論理的観点から 論理と哲学をめぐる九章』を読了しました。本書には、これを読んでいないと「モグリ」の哲学研究者と言われてしまうとい…

内井惣七『シャーロック・ホームズの推理学』

内井惣七 『シャーロック・ホームズの推理学』 講談社現代新書 内井惣七の『シャーロック・ホームズの推理学』を読了しました。シャーロック・ホームズは狭い意味での“logician”だったということを、ホームズの台詞や行動と19世紀の科学方法論とを比較するか…

坂本百大編『現代哲学基本論文集Ⅱ』

坂本百大編 『現代哲学基本論文集Ⅱ』 勁草書房 坂本百大編『現代哲学基本論文集Ⅱ』を読了しました。本書の収録作品は以下の通りです。 ジョージ・E・ムーア『観念論論駁』 アルフレッド・タルスキ『真理の意味論的観点と意味論の基礎』 ウィラード・V・O・ク…

冨田恭彦『クワインと現代アメリカ哲学』

冨田恭彦 『クワインと現代アメリカ哲学』 世界思想社 冨田恭彦の『クワインと現代アメリカ哲学』を読了しました。1994年に出版されている本書ですが、内容的には四半世紀を過ぎても古びることなく、クワイン哲学の良い入門書になっていると思います。とりわ…

飯田隆『言語哲学大全Ⅳ 真理と意味』

飯田隆 『言語哲学大全Ⅳ 真理と意味』 勁草書房 飯田隆の『言語哲学大全Ⅳ 真理と意味』を読了しました。全四巻をなす『言語哲学大全』の完結巻となります。本書の主題はデイヴィドソンのプログラムを継承するかたちで、自然言語である日本語(の一部)に意味…

ナーダシュ・ペーテル『ある一族の物語の終わり』

ナーダシュ・ペーテル 早稲田みか・簗瀬さやか訳 『ある一族の物語の終わり』 松籟社 ナーダシュ・ペーテル(1942-)の『ある一族の物語の終わり』を読了しました。何となく不思議なタイトルですが、原題は“Egy családregény vége”で、英訳では“The End Of A…

マイケル・ポランニー『暗黙知の次元』

マイケル・ポランニー 高橋勇夫訳 『暗黙知の次元』 ちくま学芸文庫 マイケル・ポランニー(1891-1976)の『暗黙知の次元』を読了しました。ハンガリー生まれの医学者であり科学哲学者であるポランニーが、明示的な知識(たとえば「Sはpである」と命題化する…

ウラジーミル・ソローキン『青い脂』

ウラジーミル・ソローキン 望月哲男・松下隆志訳 『青い脂』 河出文庫 ウラジーミル・ソローキン(1955-)の『青い脂』を読了しました。ソローキンの作品を読むのも、現代ロシア文学(本書の原著が出版されたのは1999年のこと)に触れるのも、今回が初めての…

津田敏秀『医学と仮説 原因と結果の科学を考える』

津田敏秀 『医学と仮説 原因と結果の科学を考える』 岩波書店 津田敏秀の『医学と仮説 原因と結果の科学を考える』を読了しました。同じ著者の『医学的根拠とは何か』よりも前に発表されたのが本書で、力点は多少異なりながら、本書においても疫学的なアプロ…

モーム『ジゴロとジゴレット モーム傑作選』

サマセット・モーム 金原端人訳 『ジゴロとジゴレット モーム傑作選』 新潮文庫 サマセット・モーム(1874-1965)の『ジゴロとジゴレット モーム傑作選』を読了しました。訳者あとがきによるとモーパッサンをお手本にしたというモームの短編集ですが、本書に…

村上龍『海の向こうで戦争が始まる』

村上龍 『海の向こうで戦争が始まる』 講談社文庫 村上龍の『海の向こうで戦争が始まる』を読了しました。本書は村上龍の小説第二作目で、作者自身が本書の「あとがき」で、バーで出会ったリチャード・ブローティガンからの言葉として(この挿話自体がフィク…

津田敏秀『医学的根拠とは何か』

津田敏秀 『医学的根拠とは何か』 岩波新書 津田敏秀の『医学的根拠とは何か』を読了しました。疫学を専門とする医学者による「医学的根拠」とは何かを巡る論説です。医学者(医師)を「直観派」、「メカニズム派」、「数量化派」に分類するところは解りやす…

筒井康隆『農協月へ行く』

筒井康隆 『農協月へ行く』 角川文庫 筒井康隆の『農協月へ行く』を読了しました。表題作のほか、「日本以外全部沈没」などの作品が収録されています。昔に読んだことがあるような、ないような、記憶が曖昧なのですが、エロ・グロ・風刺・タブーをものともし…

G・ライル『心の概念』

G・ライル 坂本百大・井上治子・服部裕幸訳 『心の概念』 みすず書房 G・ライル(1900-1976)の『心の概念』を読了しました。ライルがデカルトの神話と呼ぶ「機械の中の幽霊」やカテゴリーミステイクの議論によって、哲学史上あまりにも有名な本書ですが、ま…