文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

ウラジーミル・ソローキン『氷』

ウラジーミル・ソローキン 松下隆志訳 『氷』 河出書房新社 ウラジーミル・ソローキン(1955-)の『氷』を読了しました。本書は現代ロシア作家のソローキンが2002年に刊行した作品で、続いて発表されることになる『ブロの道』、そして『23000』とともに三部…

ダレル・P・ロウボトム『確率』

ダレル・P・ロウボトム 佐竹祐介訳 『確率』 岩波書店 ダレル・P・ロウボトムの『確率』を読了しました。岩波書店から刊行された「現代哲学のキーコンセプト」シリーズの一冊です。「確率」=“Proability”を巡る議論が見通しよく整理された良書です。 本書で…

サローヤン『ヒューマン・コメディ』

サローヤン 小川敏子訳 『ヒューマン・コメディ』 光文社古典新訳文庫 サローヤン(1908-1981)の『ヒューマン・コメディ』を読了しました。アルメニア人移民の2世として生まれたサローヤンが1943年に発表した長編作品が本書『ヒューマン・コメディ』です。…

シーグリッド・ヌーネス『友だち』

シーグリッド・ヌーネス 村松潔訳 『友だち』 新潮社 シーグリッド・ヌーネス(1951-)の『友だち』を読了しました。ニューヨーク生まれで書評誌の編集アシスタントを務めた後、作家になったという彼女の小説作品7作目が本書とのこと。全米図書賞の受賞作品…

小河原誠編『批判と挑戦―ポパー哲学の継承と発展にむけて』

小河原誠編 『批判と挑戦―ポパー哲学の継承と発展にむけて』 未来社 小河原誠の『批判と挑戦―ポパー哲学の継承と発展にむけて』を読了しました。科学という営みの輪郭を特徴付けるために「反証主義」を唱えた哲学者ポパーの受容史と、ポパーに対する批判への…

プラトン『国家』

プラトン 藤沢令夫訳 『国家』 岩波文庫 プラトン(BC427-BC347)の『国家』を読了しました。言わずとしれた古代の哲学者プラトンの著した対話篇です。文庫本上下巻で本文が900ページ超という長さのほぼ全編が、ソクラテスとアテナイの人々とによる対話形式…

ヘルマン・ヘッセ『ガラス球遊戯』

ヘルマン・ヘッセ 井出賁夫訳 『ガラス球遊戯』 角川文庫 ヘルマン・ヘッセ(1877-1962)の『ガラス球遊戯』を読了しました。本書はヘッセがノーベル文学賞を受賞する契機となったといわれている作品のようで、1943年に発表されたものです。『荒野のおおかみ…

エルモア・レナード『オンブレ』

エルモア・レナード 村上春樹訳 『オンブレ』 新潮文庫 エルモア・レナード(1925-2013)の『オンブレ』を読了しました。エルモア・レナードはエドガー賞も受賞したアメリカのミステリ畑の作家ですが、私が彼の作品を読むのは初めてのことでした。村上氏によ…

J・L・ボルヘス『ブロディーの報告書』

J・L・ボルヘス 鼓直訳 『ブロディーの報告書』 岩波文庫 J・L・ボルヘス(1899-1986)の『ブロディーの報告書』を読了しました。本書はアルゼンチンの作家ボルヘスの短編作品集で、比較的晩年になって発表された作品のようです。収録された作品群が持つ性格…

納富信留『プラトンとの哲学 対話篇を読む』

納富信留 『プラトンとの哲学 対話篇を読む』 岩波新書 納富信留の『プラトンとの哲学 対話篇を読む』を読了しました。著者自身が「あとがき」において触れているように、既に岩波新書にはプラトンを主題とした作品が2つもラインナップされています。そのう…

フォースター『ハワーズ・エンド』

フォースター 吉田健一訳 『ハワーズ・エンド』 河出書房新社 E・M・フォースター(1879-1970)の『ハワーズ・エンド』を読了しました。池澤夏樹氏の個人編集による世界文学全集の一冊として刊行されたもので、フォースターの作品に触れること自体が私にとっ…

星野智幸『目覚めよと人魚は歌う』

星野智幸 『目覚めよと人魚は歌う』 新潮文庫 星野智幸の『目覚めよと人魚は歌う』を読了しました。2000年に発表された三島賞受賞作です。日系ペルー人を主人公に据えた著者の視点は、その経歴からしてもグローバルなもので、ただそれだけでもフォローしたい…

ウィルフリド・セラーズ『経験論と心の哲学』

ウィルフリド・セラーズ 浜野研三訳 『経験論と心の哲学』 岩波書店 ウィルフリド・セラーズ(1912-1989)の『経験論と心の哲学』を読了しました。ローティによる序文とブランダムによる詳細な手引きが付されて一冊の書籍として刊行されていますが、本論自体…

内田百閒『ノラや』

内田百閒 『ノラや』 中公文庫 内田百閒(1889-1971)の『ノラや』を読了しました。愛猫「ノラ」と「クルツ」を巡って描かれたエッセイ(と言ってよいのでしょうか)が14編収められています。ペットロス文学というのか何というのか、不思議な連作です。 【満…

リサ・ボルトロッティ『非合理性』

リサ・ボルトロッティ 鴻浩介訳 『非合理性』 岩波書店 リサ・ボルトロッティの『非合理性』を読了しました。本書は「現代哲学のキーコンセプト」と題されて刊行された叢書の一冊で、イギリスのポリティ社から刊行された哲学教科書シリーズから精選された五…

一ノ瀬正樹『英米哲学入門―「である」と「べき」の交差する世界』

一ノ瀬正樹 『英米哲学入門―「である」と「べき」の交差する世界』 ちくま新書 一ノ瀬正樹の『英米哲学入門―「である」と「べき」の交差する世界』を読了しました。タイトルから想像されるのは、イギリス経験論あたりから始まって、プラグマティズムの論述も…

J・D・サリンジャー『フラニーとズーイ』

J・D・サリンジャー 村上春樹訳 『フラニーとズーイ』 新潮文庫 J・D・サリンジャー(1919-2010)の『フラニーとズーイ』を読了しました。著者の意向により「まえがき」や「あとがき」を付すことができない本書には、「投げ込み特別エッセイ」という形で村上…

アーダベルト・シュティフター『森ゆく人』

アーダベルト・シュティフター 松村國隆訳 『森ゆく人』 松籟社 アーダベルト・シュティフター(1805-1868)の『森ゆく人』を読了しました。本書は「シュティフター・コレクション」として刊行された叢書の第3巻で、表題作である「森ゆく人」と短い掌編であ…

トマス・ネーゲル『どこでもないところからの眺め』

トマス・ネーゲル 中村昇他訳 『どこでもないところからの眺め』 春秋社 トマス・ネーゲル(1937-)の『どこでもないところからの眺め』を読了しました。論文「コウモリであるとはどのようなことか」がつとに有名なアメリカ哲学界の重鎮のひとりですが、本書…

コルタサル『秘密の武器』

コルタサル 木村榮一訳 『秘密の武器』 岩波文庫 フリオ・コルタサル(1914-1984)の『秘密の武器』を読了しました。本書は1959年に発表された短編集です。「母の手紙」、「女中勤め」、「悪魔の涎」、「追い求める男」、「秘密の武器」の5篇が収録されてい…

ペーター・ハントケ『不安 ペナルティキックを受けるゴールキーパーの…』

ペーター・ハントケ 羽白幸雄訳 『不安 ペナルティキックを受けるゴールキーパーの…』 三修社 ペーター・ハントケの『不安 ペナルティキックを受けるゴールキーパーの…』を読了しました。2019年のノーベル文学賞受賞者であるペーター・ハントケが1970年に発…

島田荘司『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』

島田荘司 『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』 光文社文庫 島田荘司の『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』を読了しました。初めて読んだのは中学生の頃だったか高校生の頃だったか忘れてしまったのですが、何となく古本屋で手に取って久しぶりの読書となりました。コナン…

ケリー・リンク『マジック・フォー・ビギナーズ』

ケリー・リンク 柴田元幸訳 『マジック・フォー・ビギナーズ』 ハヤカワ文庫 ケリー・リンク(1969-)の『マジック・フォー・ビギナーズ』を読了しました。本書に収録された「妖精のハンドバッグ」はヒューゴー賞やネビュラ賞など、SF・ファンタジー系の賞を…

スティーヴン・ミルハウザー『エドウィン・マルハウス』

スティーヴン・ミルハウザー 岸本佐知子訳 『エドウィン・マルハウス』 河出文庫 スティーヴン・ミルハウザー(1943-)の『エドウィン・マルハウス』を読了しました。本書は1972年に発表された著者のデビュー作品で、フランスのメディシス賞外国語部門を受賞…

モーシン・ハミッド『西への出口』

モーシン・ハミッド 藤井光訳 『西への出口』 新潮社 モーシン・ハミッド(1971-)の『西への出口』を読了しました。パキスタン生まれの作者は、アメリカのロースクールを卒業後、マッキンゼーに勤務しながら小説の執筆を行い200年にデビュー、2007年に発表…

ベン・ラーナー『10:04』

ベン・ラーナー 木原善彦訳 『10:04』 白水社 ベン・ラーナー(1979-)の『10:04』を読了しました。詩人であり作家であるベン・ラーナーの作品は、ポール・オースターやジョナサン・フランゼンといった作家からの評価も高いとのこと。本書の帯には「米の若手…

佐竹謙一『スペイン文学案内』

佐竹謙一 『スペイン文学案内』 岩波文庫 佐竹謙一『スペイン文学案内』を読了しました。岩波文庫別冊として刊行されたスペイン文学へのガイド本です。本書の構成は文学史の大まかな流れを一通り追った後で、遡ってまた年代順に個々の作家や作品を取り上げる…

村田沙耶香『マウス』

村田沙耶香 『マウス』 講談社文庫 村田沙耶香の『マウス』を読了しました。本書は2008年に刊行された彼女にとって二冊目となる単行本です。現実との向き合い方に苦悩する主人公(や周囲の登場人物)が、奇妙な仕方で世界との折り合いを付けていき、その奇妙…

ヘニング・マンケル『タンゴステップ』

ヘニング・マンケル 柳沢由実子訳 『タンゴステップ』 創元推理文庫 ヘニング・マンケル(1948-2015)の『タンゴステップ』を読了しました。スウェーデンの人気作家で、刑事クルト・ヴァランダーを主人公とするシリーズがつとに有名です。本書はノンシリーズ…

アリス・マンロー『善き女の愛』

アリス・マンロー 小竹由美子訳 『善き女の愛』 新潮社 アリス・マンロー(1931-)の『善き女の愛』を読了しました。“The Love of a Good Woman”が原題で1998年に出版された短編集です。本書には8編の短編が収録されていますが、いずれも一筋縄ではいかない…