文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

J・L・ボルヘス『創造者』

J・L・ボルヘス 鼓直訳 『創造者』 岩波文庫 J・L・ボルヘス(1899-1986)の『創造者』を読了しました。小説や評論の分野で多大な影響力を残したボルヘスですが、その詩作の分野で代表的な作品のひとつが1960年に発表された本書であるとのこと。詩集というよ…

パトリック・モディアノ『ある青春』

パトリック・モディアノ 野村圭介訳 『ある青春』 白水Uブックス パトリック・モディアノ(1945-)の『ある青春』を読了しました。モディアノは何度読んでみても印象の変わらない不思議な作家のひとりです。霧中をさまようような読書体験で、後から振り返っ…

ウィリアム・バロウズ『裸のランチ』

ウィリアム・バロウズ 鮎川信夫訳 『裸のランチ』 河出文庫 ウィリアム・バロウズ(1914-1997)の『裸のランチ』を読了しました。あらためてバロウズの経歴を調べてみるとハーバード大学の英文学専攻ということで、文学エリートを思わせる華やかな学歴と、猥…

スティーヴン・キング『ダークタワーⅡ 運命の三人』

スティーヴン・キング 風間賢二訳 『ダークタワーⅡ 運命の三人』 角川文庫 スティーヴン・キングの『ダークタワーⅡ 運命の三人』を読了しました。ダークファンタジーという世界観にはやはり馴染めぬところがあるものの、異世界を主な舞台とした前作から一転…

カズオ・イシグロ『夜想曲集』

カズオ・イシグロ 土屋政雄訳 『夜想曲集』 ハヤカワ文庫 カズオ・イシグロの『夜想曲集』を読了しました。現在のところ、刊行されている唯一の短編集ということになるのでしょうか。「音楽と夕暮れを巡る五つの物語」という副題が示すとおり、音楽を重要な…

古川日出男『ハル、ハル、ハル』

古川日出男 『ハル、ハル、ハル』 河出書房新社 古川日出男の『ハル、ハル、ハル』を読了しました。2007年に出版された本書には、表題作のほかに、「スローモーション」、「8ドッグズ」という2篇の短編が収録されています。表題作は次のようなメタ的な言説か…

コルタサル『奪われた家/天国の扉 動物寓話集』

コルタサル 寺尾隆吉訳 『奪われた家/天国の扉 動物寓話集』 光文社古典新訳文庫 フリオ・コルタサル(1914-1984)の『奪われた家/天国の扉 動物寓話集』を読了しました。1951年に発表されたコルタサルの活動初期の短編集です。本書には8編の短編作品が収…

ホッブズ『リヴァイアサン』

ホッブズ 水田洋訳 『リヴァイアサン』 岩波文庫 ホッブズ(1588-1679)の『リヴァイアサン』を読了しました。イギリスの哲学者トマス・ホッブズが著した政治哲学の古典です。「人間について」、「コモン-ウェルスについて」、「キリスト教のコモン-ウェルス…

ドリス・レッシング『グランド・マザーズ』

ドリス・レッシング 山本章子訳 『グランド・マザーズ』 集英社文庫 ドリス・レッシング(1919-2013)の『グランド・マザーズ』を読了しました。2003年に発表された本書には、表題作のほか「ヴィクトリアの運命」、「最後の賢者」、「愛の結晶」という合計4…

ジェイムズ・ジョイス『ダブリナーズ』

ジェイムズ・ジョイス 柳瀬尚紀訳 『ダブリナーズ』 新潮文庫 ジェイムズ・ジョイス(1882-1941)の『ダブリナーズ』を読了しました。同じく新潮文庫に収められている『ダブリン市民』を読んだのは、たしか大学生の頃だったと思うのですが、今回はジョイス研…

アンディ・クラーク『生まれながらのサイボーグ』

アンディ・クラーク 呉羽真・久木田水生・西尾香苗訳 『生まれながらのサイボーグ』 春秋社 アンディ・クラークの『生まれながらのサイボーグ』を読了しました。サブタイトルは「心・テクノロジー・知能の未来」、心の哲学や認知科学の領域で参照されるべき…

ブッツァーティ『タタール人の砂漠』

ブッツァーティ 脇功訳 『タタール人の砂漠』 岩波文庫 ブッツァーティ(1906-1972)の『タタール人の砂漠』を読了しました。短編集『神を見た犬』を読んだときから気になっていた作品なのですが、ようやくブッツァーティの長編作品である本書を手に取ること…

A・グリーン/G・トマージ・ディ・ランペドゥーサほか『短編コレクションⅡ』

A・グリーン/G・トマージ・ディ・ランペドゥーサほか 岩本和久/小林惺ほか訳 『短編コレクションⅡ』 河出書房新社 池澤夏樹氏による個人編集の世界文学全集から『短編コレクションⅡ』を読了しました。本書にはヨーロッパ・北米の作家19人の短編が収録され…

ジョン・R・サール『MiND 心の哲学』

ジョン・R・サール 山本貴光・吉川浩光訳 『MiND 心の哲学』 ちくま学芸文庫 ジョン・R・サールの『MiND 心の哲学』を読了しました。オースティンと共に言語行為論の主導的な論者であったサールですが、人工知能批判やかの有名な中国語の部屋の議論をはじめ…

ウィリアム・ゴールディング『後継者たち』

ウィリアム・ゴールディング 小川和夫訳 『後継者たち』 ハヤカワ文庫 ウィリアム・ゴールディング(1911-1993)の『後継者たち』を読了しました。少年たちの過酷なサバイバルと殺戮を描いた第一作目の『蝿の王』が有名なゴールディングですが、本書はそれに…

ウィラ・キャザー『マイ・アントニーア』

ウィラ・キャザー 佐藤宏子訳 『マイ・アントニーア』 みすず書房 ウィラ・キャザー(1873-1947)の『マイ・アントニーア』を読了しました。ウィラ・キャザーは20世紀初め頃に活躍したアメリカ文学者で、セオドア・ドライサー(1871-1945)などとほぼ同世代…

サン=テグジュペリ『人間の土地』

サン=テグジュペリ 堀口大學訳 『人間の土地』 新潮文庫 サン=テグジュペリ(1900-1944)の『人間の土地』を読了しました。8つの断章からなる作品で、連作短編集というには各篇の構成上の繋がりが薄く、長編作品というにはストーリーラインが定まらない、不…

ジョイス・キャロル・オーツ『とうもろこしの乙女、あるいは七つの悪夢』

ジョイス・キャロル・オーツ 栩木玲子訳 『とうもろこしの乙女、あるいは七つの悪夢』 河出文庫 ジョイス・キャロル・オーツ(1938-)の『とうもろこしの乙女、あるいは七つの悪夢』を読了しました。ジョイス・キャロル・オーツといえば、雑誌『ニューヨーカ…

グレイス・ペイリー『人生のちょっとした煩い』

グレイス・ペイリー 村上春樹訳 『人生のちょっとした煩い』 文春文庫 グレイス・ペイリー(1922-2007)の『人生のちょっとした煩い』を読了しました。村上春樹氏によって『最後の瞬間のすごく大きな変化』に続いて日本語に翻訳されることになった短編集です…

リチャード・ドーキンス『利己的な遺伝子』

リチャード・ドーキンス 日髙敏隆他訳 『利己的な遺伝子』 紀伊國屋書店 リチャード・ドーキンスの『利己的な遺伝子』を読了しました。「英国史上最も影響のある科学書」に選ばれたという本書ですが、原著が出版されたのは1976年のことで、本書はその「40周…

ハン・ガン『菜食主義者』

ハン・ガン きむふな訳 『菜食主義者』 CUON ハン・ガンの『菜食主義者』を読了しました。マン・ブッカー国際賞受賞作である本書は、連作といえる三つの中編作品からなる長編小説なのですが、やはり長編作品を意図して書かれたものではないかという気がしま…

ヘミングウェイ『武器よさらば』

ヘミングウェイ 高見浩訳 『武器よさらば』 新潮文庫 ヘミングウェイ(1899-1961)の『武器よさらば』を読了しました。本書は1929年に発表された長編作品で、第一次世界大戦のイタリアを主な舞台として、イタリア軍に参加するアメリカ人のヘンリーと、イギリ…

乗代雄介『最高の任務』

乗代雄介 『最高の任務』 講談社 乗代雄介の『最高の任務』を読了しました。芥川賞候補作となった表題作のほか、「生き方の問題」という中編作品が収録されています。「生き方の問題」は、従姉弟同士の性愛という生々しいテーマを取り扱いながら、物語の核と…

ナサニエル・ウエスト『いなごの日/クール・ミリオン』

ナサニエル・ウエスト 柴田元幸訳 『いなごの日/クール・ミリオン』 新潮文庫 ナサニエル・ウエスト(1903-1940)の『いなごの日/クール・ミリオン』を読了しました。新潮文庫から合計で10冊が刊行されている村上柴田翻訳堂の最後の一冊です。フィッツジェ…

ジェフリー・デイーヴァー『ゴースト・スナイパー』

ジェフリー・デイーヴァー 池田真紀子訳 『ゴースト・スナイパー』 文春文庫 ジェフリー・デイーヴァーの『ゴースト・スナイパー』を読了しました。四肢麻痺の科学捜査官リンカーン・ライムを主人公とするミステリー小説です。数年ほど前までは、だいたい年…

ヴァージニア・ウルフ『三ギニー』

ヴァージニア・ウルフ 出淵敬子訳 『三ギニー』 みすず書房 ヴァージニア・ウルフ(1882-1941)の『三ギニー』を読了しました。みすず書房から刊行されている「ヴァージニア・ウルフ コレクション」の最後の一冊です。『自分だけの部屋』と同じく「女性」で…

ハーラン・エリスン『世界の中心で愛を叫んだけもの』

ハーラン・エリスン 浅倉久志・伊藤典夫訳 『世界の中心で愛を叫んだけもの』 ハヤカワ文庫 ハーラン・エリスン(1934-2018)の『世界の中心で愛を叫んだけもの』を読了しました。ヒューゴー賞を受賞した表題作や、映画化もされたという「少年と犬」など、15…

村上春樹『パン屋再襲撃』

村上春樹 『パン屋再襲撃』 文春文庫 村上春樹の『パン屋再襲撃』を読了しました。最初に読んだのは高校時代くらいのことだったか、詳しくは忘れてしまったのですが、久しぶりの再読となりました。収録策の初出は1985年から1986年にかけて、表題作のほか「象…

スティーヴン・キング『幸運の25セント硬貨』

スティーヴン・キング 浅倉久志他訳 『幸運の25セント硬貨』 新潮文庫 スティーヴン・キングの『幸運の25セント硬貨』を読了しました。本書は、キングの14の短編が収録された原著である短編集“Everytihing's Eventual : 14 Dark Tales”の日本語訳の二分冊の…

ディケンズ『デイヴィッド・コパフィールド』

ディケンズ 石塚裕子訳 『デイヴィッド・コパフィールド』 岩波文庫 チャールズ・ディケンズ(1812-1870)の『デイヴィッド・コパフィールド』を読了しました。1849年から1850年にかけて発表されたディケンズ中期の長編小説で、自伝的要素の強い作品であると…