文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

ジョン・チーヴァー『巨大なラジオ/泳ぐ人』

ジョン・チーヴァー 村上春樹訳 『巨大なラジオ/泳ぐ人』 新潮社 ジョン・チーヴァー(1912-1982)の『巨大なラジオ/泳ぐ人』を読了しました。雑誌『ザ・ニューヨーカー』御用達の作家で、短編小説の名手といわれたチーヴァーの選集です。作品のセレクトも…

R・ラードナー『アリバイ・アイク ラードナー傑作選』

R・ラードナー 加島祥造訳 『アリバイ・アイク ラードナー傑作選』 新潮文庫 R・ラードナー(1885-1933)の『アリバイ・アイク ラードナー傑作選』を読了しました。ラードナーは年代的にはヘミングウェイやフォークナーよりも少し上の世代に属し、若き日の…

グレアム・スウィフト『ウォーターランド』

グレアム・スウィフト 真野泰訳 『ウォーターランド』 新潮社 グレアム・スウィフト(1949-)の『ウォーターランド』を読了しました。現代イギリス作家であるスウィフトの小説を読むのは中編作品『マザリング・サンデー』に続いて二冊目となります。本書は翻…

J・M・クッツェー『夷狄を待ちながら』

J・M・クッツェー 土岐恒二訳 『夷狄を待ちながら』 集英社文庫 J・M・クッツェー(1940-)の『夷狄を待ちながら』を読了しました。本書はクッツェーの第三作目となる長編小説で、ブッカー賞を受賞した『マイケル・K』の三年前に発表された作品です。発表さ…

P・G・ウッドハウス『ジーヴズの事件簿 才知縦横の巻』

P・G・ウッドハウス 岩永正勝・小山太一編訳 『ジーヴズの事件簿 才知縦横の巻』 文春文庫 P・G・ウッドハウス(1881-1975)の『ジーヴズの事件簿 才知縦横の巻』を読了しました。イギリスのユーモア作家であるウッドハウスの「ジーヴスシリーズ」の作品を独…

ウンベルト・エーコ『バウドリーノ』

ウンベルト・エーコ 堤康徳訳 『バウドリーノ』 岩波文庫 ウンベルト・エーコ(1932-2016)の『バウドリーノ』を読了しました。イタリアの記号学者・哲学者であるエーコは、映画化もされたベストセラー小説の作家としてもよく知られています。中世ヨーロッパ…

『カート・ヴォネガット全短編 4 明日も明日もその明日も』

大森望 監修・浅倉久志 他 訳 『カート・ヴォネガット全短編 4 明日も明日もその明日も』 早川書房 『カート・ヴォネガット全短編 4 明日も明日もその明日も』を読了しました。ヴォネガットの短編全集は本書で最後となります。「ふるまい」、「リンカーン高…

ジョージ・オーウェル『動物農場』

ジョージ・オーウェル 川端康雄訳 『動物農場』 岩波文庫 ジョージ・オーウェル(1903-1950)の『動物農場』を読了しました。ディストピア小説である『1984年』の著者として知られるオーウェルのいわずと知れた寓話ですが、きちんと読むのは初めてのことのよ…

ミシェル・ウエルベック『ある島の可能性』

ミシェル・ウエルベック 中村佳子訳 『ある島の可能性』 角川書店 ミシェル・ウエルベック(1956-)の『ある島の可能性』を読了しました。2005年に発表された本書は、著者の小説作品としては五冊目のものとなります。『闘争領域の拡大』で開かれた問題圏を背…

村上春樹『猫を棄てる 父親について語るとき』

村上春樹 『猫を棄てる 父親について語るとき』 文藝春秋 村上春樹の『猫を棄てる 父親について語るとき』を読了しました。これまでほとんど家族について語ることがなかった村上氏が父親の死を契機として、書き記しておかなければならないという思いから書き…

ゴーゴリ『鼻/外套/査察官』

ゴーゴリ 浦雅春訳 『鼻/外套/査察官』 光文社古典新訳文庫 ゴーゴリ(1809-1852)の『鼻/外套/査察官』を読了しました。ウクライナ出身のロシア作家ゴーゴリの代表的な短編作品と戯曲作品が収録されています。「鼻」と「外套」は他の訳でも読んだことが…

大江健三郎・古井由吉『文学の淵を渡る』

大江健三郎・古井由吉 『文学の淵を渡る』 新潮文庫 大江健三郎と古井由吉の対談集『文学の淵を渡る』を読了しました。戦後日本を代表する作家である大江健三郎と古井由吉との間で行われた、古くは1993年、最近のものでは2015年の対談を収録したのが本書です…

『対訳 イェイツ詩集』

高松雄一編 『対訳 イェイツ詩集』 岩波文庫 高松雄一編『対訳 イェイツ詩集』を読了しました。アイルランドの詩人・劇作家であるイェイツ(1865-1939)の対訳詩集で、本書には54編の詩が収録されています。二十世紀に活躍したイェイツは、世界文学の詩人と…

ディケンズ『荒涼館』

ディケンズ 佐々木徹訳 『荒涼館』 岩波文庫 ディケンズ(1812-1870)の『荒涼館』を読了しました。原題は“Bleak House”です。1852年から1853年にかけて発表された小説で、『デイヴィッド・コパフィールド』の次に書かれた作品になります。「ジャーンダイス…

Barry Stroud “The Significance of Philosophical Scepticism”

Barry Stroud “The Significance of Philosophical Scepticism” Oxford University Press Barry Stroudの “The Significance of Philosophical Scepticism”を読了しました。原著の出版は1984年で、『君はいま夢を見ていないとどうして言えるのか―哲学的懐疑…

伊藤邦武『フランス認識論における非決定論の研究』

伊藤邦武 『フランス認識論における非決定論の研究』 晃洋書房 伊藤邦武の『フランス認識論における非決定論の研究』を読了しました。ブートルー、ポアンカレ、デュルケームという日本の哲学研究史においては決して注目されてきたとはいえないフランスの3人…

ジョナサン・サフラン・フォア『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』

ジョナサン・サフラン・フォア 近藤隆文訳 『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』 NHK出版 ジョナサン・サフラン・フォア(1977-)の『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』を読了しました。“Extremely Loud and Incredibly Close”という原タ…

シュトルム『美しき誘い 他一篇』

シュトルム 国松孝二訳 『美しき誘い 他一篇』 岩波文庫 テオドール・シュトルム(1817-1888)の『美しき誘い 他一篇』を読了しました。現在はデンマーク領である北ドイツ地方に生まれたシュトルムは、法律家であり、詩人・作家でもあります。本書は表題作の…

綿矢りさ『蹴りたい背中』

綿矢りさ 『蹴りたい背中』 河出文庫 綿矢りさの『蹴りたい背中』を読了しました。芥川賞最年少受賞ということで当時も大いに話題になった本書ですが、ふと読み返してみたくなって古本屋で文庫本を購入しました。発表当時も感じましたが、文学作品としては至…

G・ガルシア=マルケス『悪い時 他9篇』

G・ガルシア=マルケス 高見英一他訳 『悪い時 他9篇』 新潮社 G・ガルシア=マルケス(1928-2014)の『悪い時 他9篇』を読了しました。1958年から1962年にかけて発表された中短編を収録した作品集です。「大佐に手紙は来ない」、「ママ・グランデの葬儀」など…

滝口悠生『ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス』

滝口悠生 『ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス』 新潮文庫 滝口悠生の『ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス』を読了しました。滝口氏が芥川賞を受賞する前年に発表した作品で、著作としては三冊目にあたるのが本書です。まさに「体験」という他はない…

カルヴィーノ『まっぷたつの子爵』

カルヴィーノ 川島英昭訳 『まっぷたつの子爵』 岩波文庫 カルヴィーノ(1923-1985)の『まっぷたつの子爵』を読了しました。本書は戦後のイタリアを代表する作家のひとりであるカルヴィーノが比較的初期に発表した作品です。戦中・戦後のイタリアを代表する…

閻連科『年月日』

閻連科 谷川毅訳 『年月日』 白水社 閻連科(1958-)の『年月日』を読了しました。フランツ・カフカ賞の受賞者であり、現代中国で最も注目を集める作家の一人である閻連科ですが、本書『年月日』は論争を呼ぶ数々の問題作とは少し毛色が違っていて、日照りの…

J・L・ボルヘス『詩という仕事について』

J・L・ボルヘス 鼓直訳 『詩という仕事について』 岩波文庫 J・L・ボルヘス(1899-1986)の『詩という仕事について』を読了しました。本書はアルゼンチン出身の作家・ボルヘスが1967年から68年にかけてハーバード大学で行った詩学講義の記録です。古今の文学…

スティーヴン・キング『ゴールデンボーイ』

スティーヴン・キング 浅倉久志訳 『ゴールデンボーイ』 新潮文庫 スティーヴン・キング(1947-)の『ゴールデンボーイ』を読了しました。『スタンド・バイ・ミー』との二分冊で出版された“Different Seasons”の「春夏編」に当たる作品で、「刑務所のリタ・…

クッツェー『鉄の時代』

クッツェー くぼたのぞみ訳 『鉄の時代』 河出書房新社 クッツェー(1940-)の『鉄の時代』を読了しました。池澤夏樹氏による個人編集の「世界文学全集」の一冊ですが、最近になって文庫化されたようです。その前に本書を購入した私は、タイミング的にどこか…

ジョージ・ソーンダーズ『十二月の十日』

ジョージ・ソーンダーズ 岸本佐知子訳 『十二月の十日』 河出書房新社 ジョージ・ソーンダーズ(1958-)の『十二月の十日』を読了しました。2017年のブッカー賞受賞作である『リンカーンとさまよえる霊魂たち』に続く、ソーンダーズ二冊目の読書となります。…

ロバート・A・ハインライン『輪廻の蛇』

ロバート・A・ハインライン 矢野徹・他訳 『輪廻の蛇』 ハヤカワ文庫 ロバート・A・ハインライン(1907-1988)の『輪廻の蛇』を読了しました。アメリカのSF作家・ハインラインの短編集です。原書の表題作は、本作とは異なり「ジョナサン・ホーグ氏の不愉快な…

バルガス=リョサ『密林の語り部』

バルガス=リョサ 西村英一郎訳 『密林の語り部』 岩波文庫 バルガス=リョサ(1936-)の『密林の語り部』を読了しました。本書が発表されたのは1987年のことで、大統領選に出馬する1990年の少し前ということになります。第二作『緑の家』でも描かれたアマゾン…

フィリップ・ロス『背信の日々』

フィリップ・ロス 宮本陽吉訳 『背信の日々』 集英社 フィリップ・ロス(1933-2018)の『背信の日々』を読了しました。本書は作家であるネイサン・ザッカーマンを主人公(といってよいのか分かりませんが)とする作品群のひとつで、原題は“The Counterlife”…