2020-05-01から1ヶ月間の記事一覧
パトリック・モディアノ 平岡篤頼訳 『暗いブティック通り』 白水社 パトリック・モディアノ(1945-)の『暗いブティック通り』を読了しました。ゴンクール賞の受賞作品である本書が発表されたのは1978年。日本ではその翌年に邦訳が出版されていますが、韓国…
赤林朗・児玉聡編 『入門・倫理学』 勁草書房 赤林朗・児玉聡編『入門・倫理学』を読了しました。もともとは医療者向けの倫理学の教科書として書かれたものを、倫理学一般の入門書として再編集したのが本書とのことです。倫理学という学問の特徴や分類から始…
ルートヴィヒ・ヴィトゲンシュタイン 丘沢静也役 『哲学探究』 岩波書店 ルートヴィヒ・ヴィトゲンシュタインの『哲学探究』を読了しました。特異な思想家であるウィトゲンシュタインの「後期」の代表的著作が本書『哲学探究』です。しかし、本書はあくまで…
冨田恭彦 『詩としての哲学 ニーチェ・ハイデッガー・ローティ』 講談社選書メチエ 冨田恭彦の『詩としての哲学 ニーチェ・ハイデッガー・ローティ』を読了しました。定まった事実や真理なるものを希求するプラトン主義的な哲学に対して、想像力を通じた開か…
W・ジェイムズ 桝田啓三郎訳 『宗教的経験の諸相』 岩波文庫 W・ジェイムズ(1842-1910)の『宗教的経験の諸相』を読了しました。最近のプラグマティズム関連の読書の一環として手に取った本書ですが、ジェイムズ自身の哲学が孕む特殊さを脇に置いたとして…
シェリル・ミサック 加藤隆文訳 『プラグマティズムの歩き方 21世紀のためのアメリカ哲学案内』 勁草書房 シェリル・ミサックの『プラグマティズムの歩き方 21世紀のためのアメリカ哲学案内』を読了しました。現代の気鋭のプラグマティストであるミサックが…
Alfred Jules Ayer “Language, Truth and Logic” Dover Publications, Inc. Alfred Jules Ayer(1910-1989)の “Language, Truth and Logic”を読了しました。論理実証主義の影響の下に発表された20世紀の分析哲学の古典ともいえる作品ですが、邦訳が手に入り…
バートランド・ラッセル 高村夏輝訳 『哲学入門』 ちくま学芸文庫 バートランド・ラッセル(1872-1970)の『哲学入門』を読了しました。本書の原題は“The Problems of Philosophy”で発表されたのは1912年、ホワイトヘッドとの共著『プリンキピア・マテマティ…
パース、ジェイムズ、デューイ 植木豊訳 『プラグマティズム古典集成』 作品社 パース、ジェイムズ、デューイの『プラグマティズム古典集成』を読了しました。古典的プラグマティストである思想家三名のプラグマティズムに関する重要論文を一冊に編纂したの…
W・ジェイムズ 桝田啓三郎訳 『プラグマティズム』 岩波文庫 W・ジェイムズ(1842-1910)の『プラグマティズム』を読了しました。「プラグマティズム」という言葉の創始者はパースだったとすれば、それを人口に膾炙するものとしたのはウィリアム・ジェイムズ…
マリオ・バルガス・ジョサ 寺尾隆吉訳 『マイタの物語』 水声社 マリオ・バルガス・ジョサ(1936-)の『マイタの物語』を読了しました。本訳書における表記にしたがって作者の名前は「バルガス=リョサ」ではなく「バルガス・ジョサ」としておきます。日本で…
村上春樹 絵:フジモトマサル 『村上さんのところ』 新潮文庫 村上春樹の『村上さんのところ』を読了しました。期間限定の特設ウェブサイトを通じて一般の人から送られてきた37,465通のメールをすべて読み、それに対して行った3,716通の回答の中から473通を…
ローベルト・ゼーターラー 浅井晶子訳 『ある一生』 新潮社 ローベルト・ゼーターラー(1966-)の『ある一生』を読了しました。オーストリアの作家・脚本家・俳優であるというローベルト・ゼーターラーが2014年に発表した本書は、ドイツ語圏で80万部を記録す…
ヴァージニア・ウルフ 神谷美恵子 『ある作家の日記』 みすず書房 ヴァージニア・ウルフ(1882-1941)の『ある作家の日記』を読了しました。本書は1918年から1941年の期間(ウルフの年齢でいれば36歳から59歳の間に)書かれた膨大な日記の中から、ごく一部を…
マイクル・コナリー 古沢嘉通訳 『燃える部屋』 講談社文庫 マイクル・コナリー(1956-)の『燃える部屋』を読了しました。本書は警察官(一時期は私立探偵)ハリー・ボッシュを主人公としたハードボイルド小説シリーズの一作です。昔から好きで読んでいるシ…
レヴィ=ストロース 川田順造訳 『悲しき熱帯』 中公クラシックス レヴィ=ストロース(1908-2009)の『悲しき熱帯』を読了しました。文化人類学者で「構造主義」の思想家として知られるレヴィ=ストロースが、博士論文である『親族の基本構造』に次いで発表し…
ヘルマン・ヘッセ 高橋健二訳 『荒野のおおかみ』 新潮文庫 ヘルマン・ヘッセ(1877-1962)の『荒野のおおかみ』を読了しました。ヘッセの作品は読むのは随分と久しぶりのことです。『車輪の下』や『春の嵐』など、青春に付きまとう繊細な感情を謳いあげた作…
イーヴリン・ウォー 中村健二・出渕博訳 『愛されたもの』 岩波文庫 イーヴリン・ウォー(1903-1966)の『愛されたもの』を読了しました。イーヴリン・ウォーはイギリスの作家で、彼の作品を読むのは本作が初めてになります。風刺の効いた作風で好き嫌いはあ…
G・ガルシア=マルケス 高見英一他訳 『落葉 他12編』 新潮社 G・ガルシア=マルケス(1928-2014)の『落葉 他12編』を読了しました。本書はガルシア=マルケスの初期作品を収録した作品集です。表題作にもなっている「落葉」は中編作品というべき長さで、それ…
平野啓一郎 『考える葦』 キノブックス 平野啓一郎の『考える葦』を読了しました。批評・エッセイ集なのですが、何かテーマをもって編纂された書籍というよりは、近年のそれらの仕事を一冊にまとめたものです。エッセイよりは批評の方が面白いのですが、著者…
W・V・O・クワイン 大出晁・宮館恵訳 『ことばと対象』 勁草書房 W・V・O・クワイン(1908-2000)の『ことばと対象』を読了しました。本書はクワインの主著という位置づけの書物だと思いますが、特に第二章「翻訳と意味」において展開された「翻訳の不確定性…
大江健三郎 『取り替え子』 講談社文庫 大江健三郎の『取り替え子』を読了しました。もともと自身の私生活を文学的なモチーフを使って昇華しながら作品にしてきた大江氏ですが、本作の背景となっている俳優・映画監督の伊丹十三氏の自殺という出来事が、それ…
J・D・サリンジャー 村上春樹訳 『キャッチャー・イン・ザ・ライ』 白水社 J・D・サリンジャー(1919-2010)の『キャッチャー・イン・ザ・ライ』を読了しました。以前に野崎孝訳で読んだ『ライ麦畑でつかまえて』以来、何年ぶりの読書だったのか正確には解ら…
カミロ・ホセ・セラ 有本紀明訳 『パスクアル・ドゥアルテの家族』 講談社 カミロ・ホセ・セラ(1916-2002)の『パスクアル・ドゥアルテの家族』を読了しました。1989年のノーベル文学賞受賞者であるスペインの作家、カミロ・ホセ・セラが26歳のときに発表し…
ミシェル・ウエルベック 中村佳子訳 『プラットフォーム』 河出文庫 ミシェル・ウエルベック(1957-)の『プラットフォーム』を読了しました。2000年の『ランサローテ島』に続いて2001年に発表された本書で、ウエルベックが選んだのは「セックス観光」という…
ダグラス・クタッチ 相松慎也訳 『因果性』 岩波書店 ダグラス・クタッチの『因果性』を読了しました。「現代哲学のキーコンセプト」シリーズの一冊で、本書では古典的な哲学のトピックのひとつでもあり、現代においても科学哲学や新しい形而上学の文脈にお…
J・M・クッツェー くぼたのぞみ訳 『モラルの話』 人文書院 J・M・クッツェー(1940-)の『モラルの話』を読了しました。2018年に刊行された本書には7編の作品が収録されており、解説を除く本文全体の長さでいえば150ページ足らずの短い作品集です。そして、…
ロベルト・アルルト 寺尾隆吉訳 『怒りの玩具』 現代企画室 ロベルト・アルルト(1900-1942)の『怒りの玩具』を読了しました。ブエノスアイレスに生まれたアルゼンチンの作家であるアルルトは、ボルヘスとほぼ同時代の作家でありながら、まったく文学的な志…
大森望 監修・浅倉久志 他 訳 『カート・ヴォネガット全短編 3 夢の家』 早川書房 『カート・ヴォネガット全短編 3 夢の家』を読了しました。ヴォネガットの短編全集を読むのも本書で三巻目となりました。本書に収録された短編のテーマは、第二巻に引き続い…
フランソワ・ラブレー 渡辺一夫訳 『第五之書 パンタグリュエル物語』 岩波文庫 フランソワ・ラブレー(1483?-1553)の『第五之書 パンタグリュエル物語』を読了しました。偽書という説も有力とされる本書では、ストーリー上は第四之書に記された航海の旅の…