文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

2020-01-01から1ヶ月間の記事一覧

スティーヴン・マンフォード ラニ・リル・アンユム『哲学がわかる 因果性』

スティーヴン・マンフォード ラニ・リル・アンユム 塩野直之 谷川卓 訳 『哲学がわかる 因果性』 岩波書店 スティーヴン・マンフォードとラニ・リル・アンユムの『哲学がわかる 因果性』を読了しました。サブタイトルに“A VERY SHORT INTRODUCTION”とあるよ…

伊藤邦武『宇宙はなぜ哲学の問題になるのか』

伊藤邦武 『宇宙はなぜ哲学の問題になるのか』 ちくまプリマー新書 伊藤邦武の『宇宙はなぜ哲学の問題になるのか』を読了しました。筑摩書房には「ちくま新書」レーベルがありますが、この「ちくまプリマー新書」はヤングアダルト向けのコンパクトな入門書が…

『カート・ヴォネガット全短編 2 バーンハウス効果に関する報告書』

大森望 監修・浅倉久志 他 訳 『カート・ヴォネガット全短編 2 バーンハウス効果に関する報告書』 早川書房 『カート・ヴォネガット全短編 2 バーンハウス効果に関する報告書』を読了しました。早川書房から刊行されている短編全集の第二巻です。本書には、…

ミランダ・ジュライ『最初の悪い男』

ミランダ・ジュライ 岸本佐知子訳 『最初の悪い男』 新潮社 ミランダ・ジュライ(1974-)の『最初の悪い男』を読了しました。ジュライ初となる長編小説作品です。自ら充足したルールに従って生きる中年女性と、その家に転がり込んでくる若く無軌道な娘。その…

サイモン・ブラックバーン『ビーイング・グッド 倫理学入門』

サイモン・ブラックバーン 坂本知宏・村上毅訳 『ビーイング・グッド 倫理学入門』 晃洋書房 サイモン・ブラックバーン(1944-)の『ビーイング・グッド 倫理学入門』を読了しました。邦題が指し示すとおり、本書は倫理学の入門書で、原著の出版は2001年のこ…

青木淳悟『男一代之改革』

青木淳悟 『男一代之改革』 河出書房新社 青木淳悟の『男一代之改革』を読了しました。本書の表題作は寛政の改革を為した松平定信を主人公とした歴史小説なのですが、青木氏の書く小説なので一筋縄ではいかない、どこかおかしなところを持っています。松平定…

ヴァージニア・ウルフ『波』

ヴァージニア・ウルフ 川本静子訳 『波』 みすず書房 ヴァージニア・ウルフ(1882-1941)の『波』を読了しました。古本市で購入した「ヴァージニア・ウルフ コレクション」の読書も五冊目となりました。本書『波』(1931)は『ダロウェイ夫人』(1925)や『…

ペーター・ハントケ『幸せではないが、もういい』

ペーター・ハントケ 元吉瑞枝訳 『幸せではないが、もういい』 同学社 ペーター・ハントケ(1942-)の『幸せではないが、もういい』を読了しました。2019年のノーベル文学賞受賞者となったハントケですが、その著作の邦訳書はあまり流通していないのが現状で…

F. ヴェデキント『春のめざめ』

F. ヴェデキント 酒寄進一訳 『春のめざめ』 岩波文庫 F. ヴェデキント(1864-1918)の『春のめざめ』を読了しました。本書はドイツのハノーファーに生まれた劇作家ヴェデキント(父親がアメリカで長く暮らしていた関係でヴェデキントはドイツに生まれながら…

ジョセフ・K・キャンベル『自由意志』

ジョセフ・K・キャンベル 高崎将平訳 『自由意志』 岩波書店 ジョセフ・K・キャンベルの『自由意志』を読了しました。「現代哲学のキーコンセプト」として出版された哲学教科書シリーズの一冊です(どちらかというと、新しい現代の「形而上学」の教科書を意…

ジョン・アップダイク『アップダイクと私』

ジョン・アップダイク 若島正編訳・森慎一郎訳 『アップダイクと私』 河出書房新社 ジョン・アップダイク(1932-2009)の『アップダイクと私』を読了しました。本書はアップダイクの著した数多くのエッセイや評論集の中から、独自にセレクトされて編まれた作…

ドリス・レッシング『破壊者ベンの誕生』

ドリス・レッシング 上田和夫訳 『破壊者ベンの誕生』 新潮文庫 ドリス・レッシング(1919-2013)の『破壊者ベンの誕生』を読了しました。ノーベル賞作家のレッシングですが、日本では入手しやすい翻訳作品が少ないような気がします。いかめしいタイトルを付…

山口義久『アリストテレス入門』

山口義久 『アリストテレス入門』 ちくま新書 山口義久の『アリストテレス入門』を読了しました。「万学の祖」とも呼ばれるアリストテレスの広範な思想を、200ページ程度の新書のかたちにまとめるというそもそもの企画からして無理があったのではないかと感…

チェイス・レン『現代哲学のキーコンセプト 真理』

チェイス・レン 野上志学訳 『現代哲学のキーコンセプト 真理』 岩波書店 チェイス・レンの『現代哲学のキーコンセプト 真理』を読了しました。「真理」をめぐる現代哲学の様々な立場と論争をコンパクトにまとめた教科書的な書物です。著者は本書において、…

『対訳 フロスト詩集―アメリカ詩人選(4)』

川本皓嗣編 『対訳 フロスト詩集―アメリカ詩人選(4)』 岩波文庫 アメリカの詩人、ロバート・フロストの対訳詩集です。アメリカの国民詩人と評されるフロストですが、私にとっては今までは馴染みのなかった詩人でした(もともと詩をを読むことがほとんどな…

スティーヴン・ミルハウザー『ナイフ投げ師』

スティーヴン・ミルハウザー 柴田元幸訳 『ナイフ投げ師』 白水社 スティーヴン・ミルハウザー(1943-)の『ナイフ投げ師』を読了しました。12編の短編が収められた本書ですが、原書は1998年に刊行されています。柴田氏の翻訳で、日本でも人気の高いミルハウ…

エッカーマン『ゲーテとの対話』

エッカーマン 山下肇訳 『ゲーテとの対話』 岩波文庫 エッカーマン(1792-1854)の『ゲーテとの対話』を読了しました。ドイツの若き詩人であるヨハン・ペーター・エッカーマンが文豪ゲーテと出会い、彼の良き使徒としてゲーテとの間に交わされた「対話」を著…

イアン・マキューアン『憂鬱な10か月』

イアン・マキューアン 村松潔訳 『憂鬱な10か月』 新潮社 イアン・マキューアン(1948-)の『憂鬱な10か月』を読了しました。本書の原題は“Nutshell”で、直訳すると「胡桃の殻」の意です。これは本書のストーリーのモチーフとなり、巻頭のエピグラフでも引用…

ミシェル・ウエルベック『ランサローテ島』

ミシェル・ウエルベック 野崎歓訳 『ランサローテ島』 河出書房新社 ミシェル・ウエルベック(1957-)の『ランサローテ島』を読了しました。本書はウエルベックが『素粒子』に続いて発表した短編小説です。2000年に発表された本書は、ウエルベック自身が実際…

ウラジミール・ナボコフ『ルージン・ディフェンス 密偵』

ウラジミール・ナボコフ 杉本一直・秋草俊一郎訳 『ルージン・ディフェンス 密偵』 新潮社 ウラジミール・ナボコフ(1899-1977)の『ルージン・ディフェンス 密偵』を読了しました。本書は新潮社の「ナボコフ・コレクション」の一冊で、ナボコフの初期作品に…

藤沢令夫『プラトンの哲学』

藤沢令夫 『プラトンの哲学』 岩波新書 藤沢令夫の『プラトンの哲学』を読了しました。西洋哲学の源流に位置するプラトンの思想を丁寧に読み解き、解説してくれる入門書。200ページと少しばかりのこの薄い書物の中にどれだけの情報量が詰まっているのかと思…

安部公房『砂の女』

安部公房 『砂の女』 新潮文庫 安部公房(1924-1993)の『砂の女』を読了しました。1962年に発表された本書は、海外でも高く評価された作品です。読むのは高校時代以来のことでしょうか。昆虫採集のために砂丘へと出かけた男が、砂の底で女が一人暮らす家に…

氷上英廣『ニーチェの顔 他十三篇』

氷上英廣著 三島憲一編 『ニーチェの顔 他十三篇』 岩波文庫 氷上英廣(1911-1986)の『ニーチェの顔 他十三篇』を読了しました。高校時代に読んだ『ツァラトゥストラ』は岩波文庫版で氷上氏の翻訳。訳者による解説を読んで、ニーチェの謎めいた箴言や錯綜す…

M・オンダーチェ『イギリス人の患者』

M・オンダーチェ 土屋政雄訳 『イギリス人の患者』 新潮社 M・オンダーチェ(1943-)の『イギリス人の患者』を読了しました。オンダーチェは、英連邦王国セイロン(現在のスリランカに位置していた国)に生まれ、11歳でイギリスに移住した後、カナダの大学で…

J・M・クッツェー『世界文学論集』

J・M・クッツェー 田尻芳樹訳 『世界文学論集』 みすず書房 J・M・クッツェー(1940-)の『世界文学論集』を読了しました。作家と並行して文学研究者としてのキャリアも積んでいるクッツェーは数冊の評論集を出版しており、それら評論集から独自にセレクトさ…

リチャード・パワーズ『舞踏会へ向かう三人の農夫』

リチャード・パワーズ 柴田元幸 『舞踏会へ向かう三人の農夫』 河出文庫 リチャード・パワーズ(1957-)の『舞踏会へ向かう三人の農夫』を読了しました。現代アメリカを代表する作家パワーズですが、本書は彼のデビュー作で1985年に出版されました。訳者あと…

G・ガルシア=マルケス『迷宮の将軍』

G・ガルシア=マルケス 木村榮一訳 『迷宮の将軍』 新潮社 G・ガルシア=マルケス(1928-2014)の『迷宮の将軍』を読了しました。コロンビア出身でラテンアメリカを代表する作家の一人であるガルシア=マルケスが、本書『迷宮の将軍』を発表したのは1989年のこ…

島田荘司『盲剣楼奇譚』

島田荘司 『盲剣楼奇譚』 文藝春秋 島田荘司の『盲剣楼奇譚』を読了しました。島田氏の作品群の中にあっては、吉敷竹史を主人公とするシリーズの一作という位置づけになりますが、特にシリーズである必然性は感じられず、単発の作品として著されても良かった…