文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

英米文学

レイモンド・チャンドラー『大いなる眠り』

レイモンド・チャンドラー 村上春樹訳 『大いなる眠り』 ハヤカワ文庫 レイモンド・チャンドラー(1888-1959)の『大いなる眠り』を読了しました。フィリップ・マーロウを主人公とする一連のシリーズ作品の第一作にあたるのが本書なのですが、私が読むのは今…

フィッツジェラルド『グレート・ギャッツビー』

フィッツジェラルド 小川高義訳 『グレート・ギャッツビー』 光文社古典新訳文庫 スコット・フィッツジェラルド(1896-1940)の『グレート・ギャッツビー』を読了しました。最初に高校生の頃に野崎孝氏の翻訳で読んで、その後、村上春樹氏の翻訳で読み直し、…

ジュリアン・バーンズ『イングランド・イングランド』

ジュリアン・バーンズ 『イングランド・イングランド』 創元ライブラリ ジュリアン・バーンズの『イングランド・イングランド』を読了しました。『終わりの感覚』でブッカー賞を受賞している作者ですが、本書も同賞の最終候補作品になったとのこと。イギリス…

シェイクスピア『ヴェニスの商人』

シェイクスピア 『ヴェニスの商人』 白水Uブックス シェイクスピア(1564-1616)の『ヴェニスの商人』を読了しました。以前に岩波文庫版で読んだ記憶があるのですが、今回は白水社から刊行されている小田島雄志氏の翻訳です。あまりにも有名なユダヤ人商人…

スティーヴン・キング『ダークタワー Ⅵ スザンナの歌』

スティーヴン・キング 風間賢二訳 『ダークタワー Ⅵ スザンナの歌』 角川文庫 スティーヴン・キングの『ダークタワー Ⅵ スザンナの歌』を読了しました。残すところはあと二作品となった本シリーズですが、作者の別作品である『呪われた町』の登場人物である…

リチャード・パワーズ『黄金虫変奏曲』

リチャード・パワーズ 森慎一郎・若島正訳 『黄金虫変奏曲』 みすず書房 リチャード・パワーズ(1957-)の『黄金虫変奏曲』を読了しました。1985年に『舞踏会へ向かう三人の農夫』でデビューしたパワーズが、1991年に発表した第三作目にあたる小説が本書です…

アーシュラ・K・ル=グウィン『空飛び猫』

アーシュラ・K・ル=グウィン 村上春樹訳 『空飛び猫』 講談社文庫 アーシュラ・K・ル=グウィン(1929-2018)の『空飛び猫』を読了しました。SF作家として、また『ゲド戦記』などのファンタジー作品の書き手として知られる作者ですが、本書のような絵本作品…

フィリップ・K・ディック『ヴァリス[新訳版]』

フィリップ・K・ディック 山形浩生訳 『ヴァリス[新訳版]』 ハヤカワ文庫 フィリップ・K・ディック(1928-1982)の『ヴァリス』を読了しました。カバー裏に書かれた粗筋などから、本書が問題作という位置づけであることは知っていたのですが、読み進める…

マイクル・コナリー『素晴らしき世界』

マイクル・コナリー 古川嘉通訳 『素晴らしき世界』 講談社文庫 マイクル・コナリーの『素晴らしき世界』を読了しました。原題は“Dark Sacred Night”なのですが、「暗く聖なる夜」という邦題の別作品が既に存在(原題は“Lost Light”)していて、これは何とも…

アイザック・アシモフ『われはロボット[決定版]』

アイザック・アシモフ 小尾芙佐訳 『われはロボット[決定版]』 ハヤカワ文庫 アイザック・アシモフ(1920-1992)の『われはロボット[決定版]』を読了しました。「ロボット工学三原則」を掲げて展開される作品群から成る、いわば連作短編集のような構成に…

J・K・ローリング『ハリー・ポッターと死の秘宝』

J・K・ローリング 松岡佑子訳 『ハリー・ポッターと死の秘宝』 静山社 J・K・ローリングの『ハリー・ポッターと死の秘宝』を読了しました。世界的ベストセラーとなったファンタジーシリーズも第七作目である本書で完結となります。シリーズを通して張られて…

スティーヴン・キング『ダークタワー Ⅴ カーラの狼』

スティーヴン・キング 風間賢二訳 『ダークタワー Ⅴ カーラの狼』 角川文庫 スティーヴン・キング(1947-)の『ダークタワー Ⅴ カーラの狼』を読了しました。作家の集大成ともいえるダーク・ファンタジー作品もシリーズの後半に入って、物語がクライマックス…

J・K・ローリング『ハリー・ポッターと謎のプリンス』

J・K・ローリング 松岡佑子訳 『ハリー・ポッターと謎のプリンス』 静山社 J・K・ローリングの『ハリー・ポッターと謎のプリンス』を読了しました。シリーズ全体を通して見ると、最終章へと向かうための助走といった位置づけの作品になるのだと思いますが、…

コリン・デクスター『謎まで三マイル』

コリン・デクスター 大庭忠男訳 『謎まで三マイル』 ハヤカワ文庫 コリン・デクスター(1930-2017)の『謎まで三マイル』を読了しました。思考の霧の中を彷徨うことで事件の捜査を行うモース主任警部を主人公とするミステリ作品の一作です。いみじくも本書の…

アリ・スミス『冬』

アリ・スミス 木原善彦訳 『冬』 新潮社 アリ・スミス(1962-)の『冬』を読了しました。『秋』に続く四季をタイトルに冠した小説作品群の第二作目となります。シリーズ全体を通して登場人物などに緩やかな繋がりがありつつ、時事を小説世界の中に取り込みな…

カズオ・イシグロ『忘れられた巨人』

カズオ・イシグロ 土屋政雄訳 『忘れられた巨人』 ハヤカワ文庫 カズオ・イシグロ(1954-)の『忘れられた巨人』を読了しました。ハードカバーで刊行された当時に読んで以来、訳7年振りの再読となりました。物語の鍵となる霧の存在感とそれがもたらす忘却の…

『ヘンリー・ジェイムズ作品集2 ポイントンの蒐集品 メイジーの知ったこと 檻の中』

大西昭男 多田敏男 川西進 青木次生 訳 『ヘンリー・ジェイムズ作品集2 ポイントンの蒐集品 メイジーの知ったこと 檻の中』 国書刊行会 『ヘンリー・ジェイムズ作品集2 ポイントンの蒐集品 メイジーの知ったこと 檻の中』を読了しました。収録作品のうち「ポ…

ヘミングウェイ『誰がために鐘は鳴る』

ヘミングウェイ 高見浩訳 『誰がために鐘は鳴る』 新潮文庫 ヘミングウェイ(1899-1961)の『誰がために鐘は鳴る』を読了しました。左派と右派に別れて苛烈な争いが行われたスペイン内戦を舞台にした小説で、長編第一作である『日はまた昇る』に続いて、スペ…

スティーヴン・キング『ダークタワー Ⅳ-1/2 鍵穴を吹き抜ける風』

スティーヴン・キング 風間賢二訳 『ダークタワー Ⅳ-1/2 鍵穴を吹き抜ける風』 角川文庫 スティーヴン・キング(1947-)の『ダークタワー Ⅳ-1/2 鍵穴を吹き抜ける風』を読了しました。本書はシリーズが完結に至った後に書かれた、いわばスピンオフのような位…

J・K・ローリング『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』

J・K・ローリング 松岡佑子訳 『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』 静山社 J・K・ローリングの『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』を読了しました。シリーズ五作目となる本書ですが、この作品くらいからシリーズを原作とした映画作品の方にはまったく触…

スティーヴン・キング『ダークタワー Ⅳ 魔道師と水晶球』

スティーヴン・キング 風間賢二訳 『ダークタワー Ⅳ 魔道師と水晶球』 角川文庫 スティーヴン・キング(1947-)の『ダークタワー Ⅳ 魔道師と水晶球』を読了しました。前作の『荒地』においてまるで中途半端なままに打ち切られた、知性を持つ高速モノレール〈…

J・K・ローリング『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』

J・K・ローリング 松岡佑子訳 『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』 静山社 J・K・ローリングの『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』を読了しました。シリーズ四作目となる本書は、ストーリー展開もこれまでの三冊とはいささか趣向が変わっていて、シリー…

レイ・ブラッドベリ『火星年代記〔新版〕』

レイ・ブラッドベリ 『火星年代記〔新版〕』 レイ・ブラッドベリ(1920-2012)の『火星年代記〔新版〕』を読了しました。単行本としては1950年に発表されたSF小説の古典ともいえる作品ですが、本書は「新版」と銘打たれているように、1997年になってから作者…

H・P・ラヴクラフト『狂気の山脈にて クトゥルー神話傑作選』

H・P・ラヴクラフト 南條竹則編訳 『狂気の山脈にて クトゥルー神話傑作選』 新潮文庫 H・P・ラヴクラフト(1890-1937)の『狂気の山脈にて クトゥルー神話傑作選』を読了しました。新潮スタークラシックスと銘打って海外文学の古典新訳が不定期で刊行されて…

J・K・ローリング『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』

J・K・ローリング 松岡佑子訳 『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』 静山社 J・K・ローリングの『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』を読了しました。良くいえば定番のプロット、悪くいえば同工異曲ともいえる展開ではあるのですが、それでも少しずつ…

J・K・ローリング『ハリー・ポッターと秘密の部屋』

J・K・ローリング 松岡佑子訳 『ハリー・ポッターと秘密の部屋』 静山社 J・K・ローリングの『ハリー・ポッターと秘密の部屋』を読了しました。魔法学校に通うハリー・ポッターを主人公とするファンタジーシリーズの第二作品目です。黒幕の存在を完全には気…

タチアナ・ド・ロネ『サラの鍵』

タチアナ・ド・ロネ 高見浩訳 『サラの鍵』 新潮社 タチアナ・ド・ロネ(1961-)の『サラの鍵』を読了しました。本書カバーに記されたプロフィールによると、作者はパリ郊外で生まれパリとボストンで育ち、イギリスのイースト・アングリア大学で英文学を学ん…

J・K・ローリング『ハリー・ポッターと賢者の石』

J・K・ローリング 松岡佑子訳 『ハリー・ポッターと賢者の石』 静山社 J・K・ローリングの『ハリー・ポッターと賢者の石』を読了しました。映画を見た記憶はあるのですが、原作シリーズを読むのは初めてとなります。読んでみて強く感じられたのは伏線の仕掛…

モーシン・ハミッド『コウモリの見た夢』

モーシン・ハミッド 川上純子訳 『コウモリの見た夢』 ランダムハウスジャパン モーシン・ハミッド(1971-)の『コウモリの見た夢』を読了しました。作者の小説を読むのは本書で二冊目となります(現状、翻訳が出版されているのが二冊)。ブッカー賞最終候補…

フィリップ・ロス『プロット・アゲンスト・アメリカ もしもアメリカが…』

フィリップ・ロス 柴田元幸訳 『プロット・アゲンスト・アメリカ もしもアメリカが…』 集英社 フィリップ・ロス(1933-2018)の『プロット・アゲンスト・アメリカ もしもアメリカが…』を読了しました。2004年に発表された作品で、作者と“同名”のフィリップ・…